2009 Fiscal Year Annual Research Report
水溶液中における分子認識予測のための分子軌道計算モデルの確立と応用
Project/Area Number |
20500276
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
谷 誠治 Yamaguchi University, 大学院・理工学研究科, 助教 (60197514)
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Keywords | 蛍光プローブ / ミトコンドリア |
Research Abstract |
本研究課題では、溶質-溶媒(水分子)相互作用に起因するエントロピー項を定量的に取り扱う計算モデルを確立し、特定の核酸塩基配列やアミノ酸配列を認識・結合する新規なプローブ分子の設計に応用することを最終目的としている。平成21年度は、溶質分子の周りに水分子を配置する水和クラスターモデルを用いた量子化学的計算モデルを、より多くの原子を含む系に応用する予定であった。しかし、現在予備実験として進行中の新規蛍光プローブ分子の開発にあたって、1)蛍光プローブの耐光性、および、2)細胞内器官(ミトコンドリア)への特異的結合に関する実験上の問題を解決することが急務となった。そこで、当初計画を変更し、蛍光プローブの分子設計とその応用を今年度の主な研究課題として取り組むこととした。これらの結果を以下に要約する。 1) 一般に、有機色素を粘土鉱物に吸着させることにより、色素の分光学的性質を制御したり、その耐光性を高めることができると考えられている。そこで、粘土鉱物(合成サポナイト)共存下における蛍光色素の耐光性を調べた。その結果、粘土鉱物により光分解が促進される色素と促進されない色素があることが明らかとなった。光分解が促進されたローダミンBに関しては、さらに、プロトンNMRによりその光分解反応機構を明らかにし、光分解が促進される化学構造因子を見いだすとともに、耐光性にすぐれた蛍光プローブの設計指針に関する知見を得た。 2) 蛍光プローブの応用に関する実験的研究においては、最近開発された二光子吸収蛍光性フルオレン誘導体が、生細胞中のミトコンドリアの選択的染色剤として利用できるかどうかについて調べた。ゾウリムシおよびHela細胞を染色し、蛍光顕微鏡観察を行った結果、有機溶媒を使用することなく、フルオレン誘導体の水溶液により生細胞中のミトコンドリアを選択的に染色でき、また、ミトコンドリアの形が時間とともに変化するようすが見られた。さらに、フルオレン誘導体の蛍光退色や細胞毒性は極めて小さいことが明らかとなった。
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