2010 Fiscal Year Annual Research Report
心的過程の神経機構に基づく動的情報検索アルゴリズムの構築
Project/Area Number |
20500279
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
岡本 洋 独立行政法人理化学研究所, 脳回路機能理論研究チーム, 客員研究員 (00374067)
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Keywords | ニューラルネットワーク / ヒステリシス / 確率過程 / 時系列 / 隣接行列 / ベイズ推定 / 記憶想起 / 引用ネットワーク |
Research Abstract |
I.昨年度までに、特定の時系列を生成するニューラルネットワークモデルを構築した。本年度は、本研究課題の最終目標である「初期条件に応じて様々な時系列を生成するニューラルネットワークモデルの構築」に取り組んだ。有向グラフを考え、各ノードにヒステリシス応答特性を有するニューロンを、リンクにシナプス結合を対応させた。さらに、各ニューロンは背景ノイズを受けており、その状態更新は確率過程的に行われるとした。初期状態に漸次的に依存した時系列が生成されることを、シミュレーションで確認した。モデルを数学的に解析し、この時系列生成過程がベイズ推定に相当することを明らかにした。すなわちこのモデルは、グラフの隣接行列(「どのノードからどのノードに繋がりがあるか」を表現する)を「事前知識」、初期条件を「証左」として、対応する時系列をベイズの定理に基づく事後確率に従って生成する。以上の結果は、我々があることをきっかけ・手掛かりとして時系列的な記憶を呼び起こす過程は、事象のネットワーク(関係性)として蓄えられた長期記憶を表わす隣接行列を事前知識とし、このきっかけ・手掛かりを証左とするベイズ推定であることを示唆する。 II.Iのモデルを特許の引用ネットワークに適用し、その工学的有用性を検討した。ある特許群(に対応するニューロン群)に初期活性を与えると、別の特許群が系列的に続々と活性化される。これは、初期状態として指定された特許群に関連する、あるいは、影響を与えた特許群が想起される過程であると考えられる。
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