2008 Fiscal Year Annual Research Report
パーキンソン病に対する視床下核刺激術:治療成績の向上と医療経済効果の検討
Project/Area Number |
20500297
|
Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
馬場 康彦 Fukuoka University, 医学部, 講師 (50352258)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 達夫 福岡大学, 医学部, 教授 (50142211)
福島 武雄 福岡大学, 医学部, 教授 (10078735)
|
Keywords | パーキンソン病 / 深部脳刺激治療 / 術後管理 / 医療経済効果 |
Research Abstract |
平成20年度は10例のパーキンソン病(PD)に対して両側視床下核(STN)深部脳刺激術(DBS)を施行し,平成20年以前の症例を併せると約30名のPDについて検討が可能であった.当該研究の主旨である治療成績の向上については,1)術前の手術適応基準と,2)画像学的及び神経生理学的検査により同定した電極留置部位と刺激条件の両者について術後の臨床経過に対する影響を調査した.結果,運動症状の長期改善効果は電極留置部位や刺激条件などによる影響は低く,術前の薬物治療に対する反応性の程度が最も寄与する因子であった.またSTN-DBS後に,抑うつや高揚感などの精神症状が出現することがあり,このような症状を呈する症例とSTN内における刺激部位の関連性を検討したところ,STNの腹側に留置した電極から術後に刺激を開始した症例において症状が最も発現しやすいことが判明した.STNの腹側には情動を司る辺縁系領域が存在し,この部位への刺激波及効果と術後の精神症状発現との関連性が高いと考えている.一方,DBS後にPDの体軸症状と言われる発声,嚥下,姿勢,歩行などが悪化することがあり,これらは薬物治療や激術条件の調整による改善効果に乏しく,疾患の進行に伴う治療抵抗性の症状と考えられていた.近年,DBSにより神経伝達物質であるアデノシンが脳内で増加することが報告された.これらの物質は神経化学的にPDを悪化させる作用を有することから,術後に悪化する体軸症状との関連性が示唆される.術後に体軸症状が悪化した12例に対してアデノシン受容体拮抗薬である抗コリン薬を投与したところ体軸症状の著明な改善が認められた.これはPDに対するDBSの影響と術後の薬物管理において重要な見解と考えられた.以上の研究成果は神経学会機関紙に現在投稿中である.また,DBS治療群と薬物治療群の長期観察における医療経済効果の比較検討も継続中である.
|