2010 Fiscal Year Annual Research Report
イノシトール3リン酸受容体が高次脳機能に果たす役割の解明
Project/Area Number |
20500301
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
久恒 智博 独立行政法人理化学研究所, 発生神経生物研究チーム, 研究員 (10321803)
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Keywords | イノシトール3リン酸 / 脳 / 運動 |
Research Abstract |
本年度は、小脳中脳特異的にIP3R1を欠損したマウスを用いて、IP3R1を介したカルシウムシグナルが運動機能に果たすメカニズムを明らかにすることを目的とした。小脳中脳特異的にIP3R1を欠損したマウスは、ジストニア症状を起こすことを明らかにした。小脳プルキンエ細胞の活動を無麻酔下で生体内記録し、ジストニア発症とプルキンエ細胞の異常活動が相関することを明らかにした。異常発火は、ハルマリンを腹腔内投与した際に起こる登上線維の入力パターンに似ていた事から、おそらく、オリーブ核からのプルキンエ細胞への入力異常が小脳中脳特異的IP3R1欠損マウスにジストニアを起こしている事が推定された。さらに、小脳活動をグルタミン酸受容体の阻害剤を小脳に注入し阻害すると、小脳中脳特異的にIP3R1を欠損したマウスのジストニア症状が緩和されることを明らかにした。小脳の不活化は、野生型マウスの小脳にグルタミン酸受容体の阻害剤を注入し阻害すると小脳失調を呈することで判断した。さらに、遺伝学的にプルキンエ細胞を消失するミュータントマウスとの交配により、小脳中脳特異的IP3R1欠損マウスのジストニア症状が消失し、小脳失調のみ示すマウスになることを明らかにした。プルキンエ細胞の消失は、calbindin抗体で確認し、IP_3R1の欠損は、抗IP_3R1抗体(18A10)で確認した。 以上の結果、小脳中脳特異的にIP3R1を欠損したマウスは、小脳を起点とするジストニアモデルとなることがわかった。おそらく、IP_3R1を介したカルシウムシグナルがinferior oliveの活性(同調)に関与していると思われる。さらに、小脳中脳特異的にIP3R1を欠損したマウスの脳においてモノアミン(ドーパミン、ノルアドレナリンなど)の量に著しい変化が生じる事を明らかにした。
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