2008 Fiscal Year Annual Research Report
ホメオティック因子ATBF1のアルツハイマー病脳における発現上昇機序と意義の解明
Project/Area Number |
20500305
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Research Institution | National Institute for Longevity Sciences,NCGG |
Principal Investigator |
鄭 且均 National Institute for Longevity Sciences,NCGG, アルツハイマー病研究部, 室長 (00464579)
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Keywords | アルツハイマー病 / amyloid β / 神経細胞死 |
Research Abstract |
アルツハイマー病(AD)ではamyloid β蛋白(Aβ)が中枢神経系でDNAダメージやシナプス障害を引き起こすことで神経細胞死が起こると報告されているが、Aβの神経障害機構の詳細は未確定である。最近、私たちはホメオティック因子ATBF1(AT-motif binding factorl)を同定し、この分子が神経細胞分化と細胞周期に関わる重要な遺伝子の転写調節因子であることを明らかにしてきた。更に最近、ATBF1が胎児中枢神経系ばかりでなく、AD脳やアルツハイマー病モデルマウスの脳の神経細胞において顕著に発現が上昇していることを明らかにし、ATBF1がAβの神経障害機構において重要な役割を果たしている可能性を見出した。本年度はアルツハイマー病脳でATBF1が上昇する分子機構と意義の解明をするため次のような実験を行った。 A.研究方法 1)ラットprimary神経細胞を用いて、DNAダメージを起こす因子であるAβ,etoposide,homocysteineを投与しATBF1の発現をReal-time PCRおよびwestern blotで調べた。 2)神経細胞にATBF1 siRNAを処理後、Aβによる細胞死または細胞生存率への影響を調べた。 3)神経細胞にAβを処理し、ATBF1と神経細胞のアポトーシスを誘導する因子であるATM(Ataxia Telangiectasia Mutated)の結合を免疫沈降法で調べた。 B.研究結果と考察 1)神経細胞にAβを投与することによってATBF1のmRNAと蛋白の発現が上昇した。 2)ATBF1 siRNAを用いてATBF1の発現をノックダウンすることによりAβによる神経細胞死が押さえられた。 3)Aβを処理によってATBF1はアポトーシスを誘導する因子であるATMと結合した。 C.結論 AD脳においてATBF1の発現上昇はAβにより引き起こされたDNAダメージに対する反応であることを明らかにした。さらに、ATBF1は神経細胞死を誘導する因子であるATMのシグナルを促進することによって神経細胞死を誘導することが分かった。
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