2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20500315
|
Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
林 謙介 Sophia University, 理工学部, 教授 (50218567)
|
Keywords | 神経細胞 / 樹状突起 / 細胞移動 / 細胞極性 |
Research Abstract |
脳の発生においていくつかの種類のニューロンは、発生した後に長い距離を移動して目的地に到達する。それらの移動経路については数多くの研究がおこなわれているが、移動能力の獲得についてはあまり研究が進んでいない。我々は、ラット内側基底核原基(MGE)ニューロンを用いて、ニューロンの移動性について研究を行った。 MGEで発生したニューロンをグリア細胞と共培養すると、胎児の脳の他部域に比べて非常に高い移動能を持ち、その移動能は4日間維持した。移動の進行方向には成長円錐を持つ先導突起を伸長させていた。軸索の形成にはGSK3βが関与することが知られている。そこで、先導突起の形成に対するGSK3阻害剤の影響を調べた。MGEニューロンにGSK3阻害剤を与えると、形成する突起の数は増え、長さは短くなった。すなわち、先導突起の形成が阻害された。また、グリア細胞との共培養においてGSK3阻害下では移動速度が低下した。これらの事から、先導突起の形成にはGSK3が関わっていると考えられる。 一方、MGEニューロンを培養基質に接着させると、先導突起の成長円錐は活動するにも関わらず、突起は伸長ず、細胞の移動も起こらなかった。従って、先導突起の成長円錐には突起を伸長させる機能を欠くと考えられる。軸索の伸長にはAkt/GSK3β経路が関わっていることが知られている。そこで、先導突起形成後のMGEニューロンにおいてGSK3βを阻害したところ、先導突起の有意な伸長が見られた。本研究は、先導突起の発生および伸長、すなわちニューロンの移動性にGSK3が関わっていることを示している。
|