2008 Fiscal Year Annual Research Report
中枢神経系の損傷部への細胞移植による神経再生促進のメカニズムの解明
Project/Area Number |
20500318
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Organization for Medical Research |
Principal Investigator |
川野 仁 Tokyo Metropolitan Organization for Medical Research, 東京都神経科学総合研究所, 副参事研究員 (20161341)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
黒田 純子 (財)東京都医学研究機構, 東京都神経科学総合研究所, 研究員 (20142151)
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Keywords | 脳 / 損傷 / ドーパミン神経路 / 細胞移植 / 嗅球グリア / 線維芽細胞 / 瘢痕 / コラーゲン |
Research Abstract |
本年度は二種類の中枢神経系の損傷モデルラットを用いて軸索再生の研究を行った。 1.脳の損傷部への細胞移植による神経再生の促進 中枢神経系では神経軸索が切断されるとその後の軸索再生は極めて難しい。その理由として、一般には、損傷部周辺に形成されるグリア瘢痕やそこで増加するコンドロイチン硫酸プロテオグリカンが神経再生の阻害因子と信じられている。 一方、嗅球グリア細胞(OEC)の損傷部への移植はもっとも有望な脊髄損傷の臨床的治療法と考えられ、すでに世界各国でヒトへの応用が始まっている。しかしこれまで、OEC移植による神経再生促進のメカニズムは不明であった。そこでわれわれは、ラットの黒質線条体ドーパミン神経路を幅2mmのナイフで切断し、新生仔ラット嗅球より採取し、培養したOECを損傷部に移植した。損傷後2週間の脳では、ドーパミン線維は損傷部を越えて再生することはなく、損傷部にIV型コラーゲンを含む線維性瘢痕が形成されていた。それに対し、OECを損傷部に移植した脳では多くの再生線維が損傷部を越えて伸長していた。OEC移植によりグリア瘢痕の形成やコンドロイチン硫酸プロテオグリカンの発現に変化は見られなかったが、線維性瘢痕は形成されていなかった(Teng et al.,2008)。 今回の実験結果は、以前からわれわれが提唱している「線維性瘢痕が中枢神経系における軸索再生の阻害因子である」こと(Kawano et al.,2005;2007;Li et al.,2007)を支持するとともに、 OEC移植による脊髄損傷の治療法に理論的根拠を与える意味でも極めて重要な意味がある。
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Research Products
(14 results)