2010 Fiscal Year Annual Research Report
チロシン水酸化酵素の機能発現の新たな制御機構の解明と神経疾患治療法の開発
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20500331
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
山國 徹 東北大学, 大学院・薬学研究科, 准教授 (30333793)
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Keywords | チロシン水酸化酵素 / 新規発現制御メカニズム / V-1 / CapZ / F-アクチンの形成促進 / 転写 / siRNA / ドパミンの生合成 |
Research Abstract |
中脳黒質ドパミン神経変性疾患であるパーキンソン病の新規治療法の開発を目指し、本研究では、私たちが発見したドパミン合成酵素チロシン水酸化酵素(TH)の機能発現の新規制御因子Wに着目して、V-1によるTHの制御機構を精査した結果、下記の注目すべき研究成果を得ることに成功した。 (1)細胞骨格制御因子であるCapZはアクチン線維の一方の末端(プラス端)に結合してその線維末端へのアクチンモノマーの付加を阻害するタンパク質である。他方、アンキリンリピート・タンパク質であるV-1は、副腎褐色細胞腫由来細胞において、そのリピート配列を介してCapZに結合してそのアクチン結合部位をマスクする。これにより、CaZはアクチン線維末端に結合できなくなる。その結果、細胞内にはCapZフリーのアクチン線維の量が増え、アクチンモノマーが付加され易くなり、アクチン線維形成が促進される。2010年私たちはこのようなV.1の作用メカニズムを世界で初めて解明し、その成果を論文として発表した(PLoS Biology 8(7) : e1000416,2010)。 (2)V-1、CapZβ_2および、幹細胞や前駆細胞などの未熟な細胞の自己再生および増殖・分化を制御するpref-1/DLK1のノックダウンのTH転写レベルへの影響を検討するため、これらの各siRNAとラットTH遺伝子の転写開始点から上流9kbpのプロモーター領域を持つレポーター遺伝子pTH-Lucをコトランスフェクションして、48時間後Lucの活性を測定した。その結果、V-1、CapZβ_2およびpref-1/DLK1のノックダウンによりTH転写活性は顕著に抑制された。さらに、ノックダウンによるTHタンパク質レベルの低下が認められた。 つまり、V-1によるTH遺伝子発現制御にはCapZ依存的なメカニズムが存在すること、これにはpref-1/DLK1が関与することを突き止めた。V-1トランスジェニックマウスではTHタンパク質レベルが上昇することから、これはV-1/CapZ複合体によるTH遺伝子発現調節機構、すなわち細胞骨格制御因子によるドパミン合成酵素THの転写制御に関わる新たな生体内調節機構の存在を示す有力な証拠となる。
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Research Products
(13 results)