2010 Fiscal Year Annual Research Report
蛋白質チロシン脱リン酸化酵素による神経機能制御機構の解明
Project/Area Number |
20500332
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
大西 浩史 群馬大学, 生体調節研究所, 准教授 (70334125)
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Keywords | 蛋白質チロシンリン酸化 / 細胞間相互作用 / ストレス応答 / うつ |
Research Abstract |
本研究では、脳における細胞質型チロシン脱リン酸化酵素Shp2の機能解析に取り組んでいる。本年度は、Shp2の結合分子である、受容体型膜蛋白質SIRPαのチロシンリン酸化シグナルの解析を進めた。SIRPαは成熟した神経系に強く発現し、細胞内領域がチロシンリン酸化を受けてShp2と相互作用し、これを活性化する。SIRPαの細胞外領域は、別の膜蛋白質CD47の細胞外領域と特異的に相互作用し、細胞間相互作用シグナルを形成する。これまでに、SIRPα、CD47、それぞれのKOマウスが、強制水泳(FS)テストにおいて、動物のうつ傾向の指標となる無動時間の増加傾向を示すことを明らかにし、CD47-SIRPα系が脳のストレス応答シグナルとして機能する可能性を示している。本年度は、SIRPαのチロシンリン酸化が、どのような神経細胞機能を制御するのかを明らかにする目的で、SIRPαリン酸化誘導のメカニズムの解明に取り組み、FSが生体に与える刺激の中で、どのような入力がSIRPαのチロシンリン酸化と関連するのかを検討した。その結果、水温23℃のFSでは、脳におけるSIRPαのチロシンリン酸化が誘導されるとともに、直腸温が10℃前後低下することを見出した。一方、水温が37℃のFSでは、体温低下は認められず、SIRPαのリン酸化も見られなかった。さらに、エタノールで低体温を誘導したマウスや、麻酔下で強制的に冷却したマウスの脳組織、さらには、低温に暴露した培養神経細胞でもSIRPαのチロシンリン酸化が誘導されることから、低温ストレスがSIRPαのチロシンリン酸化を直接誘導することを明らかにした。SIRPαは、低温によって誘導される新たなストレス応答シグナルとして、低温状態への神経細胞の適応応答を担う可能性が考えられた。一方で、Shp2と脳機能との関連について、脳特異的コンディショナルKOマウスを用いた解析も進行中である。
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