2010 Fiscal Year Annual Research Report
樹状細胞が分泌する新規神経幹細胞増殖因子の機能解析
Project/Area Number |
20500341
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
大多 茂樹 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (20365406)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
戸田 正博 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (20217508)
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Keywords | 神経科学 / 移植・再生医療 |
Research Abstract |
免疫担当細胞である樹状細胞が神経幹(前駆)細胞を増殖させること、その効果を担う責任分子として、MIF(macrophage migration inhibitory factor)を新たに同定することに成功し、その作用機序の解明を行った。マウス線条体より培養したニューロスフェアにおいて、MIFレセプターであるCD74/CD44共陽性細胞の存在が明らかとなった。また、MIFの神経幹(前駆)細胞に及ぼす効果をin vitroにおいて解析した結果、MIFにより、有意に神経幹(前駆)細胞の細胞増殖が亢進されるとともに、1次および2次ニューロスフェア形成が元進されることが明らかとなった。これらの作用を担う分子機構として、Erk,Akt,Stat3といったシグナル因子の活性化が明らかとなった。さらに興味深いことに、MIFによりAMPKが活性化されるとともに、GULT1の細胞膜表面での発現亢進が観察された。このことは、MIFによりグルコース取り込みが促進され、細胞増殖や生存維持につながっている可能性を示唆している。我々は、以前の研究成果により、転写因子であるSOX6が神経幹(前駆)細胞の生存維持に重要な役割を果たすことを明らかにした。今回、新たにMIFが神経幹(前駆)細胞においてSOX6の発現を亢進することを新たに見いだした。このことは、MIFが様々なステムネス関連因子を駆動することにより、その機能を果たしていることを示唆している。また、MIFはケモカインレセプターであるCXCR4のリガンドであることも知られているが、神経幹(前駆)細胞においてCXCR4が発現するとともに、MIFにより神経幹(前駆)細胞の細胞移動能が亢進することをセルインサートを用いたin vitroでの解析法により明らかにするとともに、脳スライスを用いたin vitro培養系においても同様に明らかにした。これらの知見を総合すると、種々の神経変性疾患において、MIFを基盤とした内在性神経幹(前駆)細胞の活性化が、それら疾患の治療につながる可能性を示唆している。
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