2009 Fiscal Year Annual Research Report
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20500343
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
松田 純子 Tokai University, 糖鎖科学研究所, 准教授 (60363149)
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Keywords | スフィンゴ脂質 / フィトスフィンゴ脂質 / スフィンゴ脂質-C4-水酸化酵素(Des2) / 小腸上皮 / 尿細管上皮 / 脳海馬体 / ノックアウトマウス |
Research Abstract |
スフィンゴ糖脂質(GSL)は、セラミドとよばれる疎水性の脂質部分と親水性の糖鎖部分から成る両親媒性の分子群で、全ての脊椎動物の細胞膜に存在する。脊椎動物のGSLには糖鎖構造および脂質構造の違いによって多様な分子種が知られ、動物種別、組織あるいは細胞の種類別、発達段階別に、主として生合成系と分解系の平衡によって厳格に発現制御されている。我々はGSLの疎水性部分の多様性が持つ生物学的意味を解明する目的で、セラミドのスフィンゴ塩基部分のC4位に水酸基を1個多く持つフィトスフィンゴ糖脂質(phyto-GSL)の構造決定に関わる、ジヒドロセラミド:スフィンガニンC-4-水酸化酵素(Des2)のノックアウトマウス(Des2-/-)を作成した。昨年度までの研究で、野生型マウスではphyto-GSLを極めて豊富に含む小腸および腎臓において、Des2-/-はphyto-GSLを完全に欠損していることを確認し、Des2はマウスにおいてphyto-GSLの合成に関わる主要な酵素であることを明らかにした。この結果を踏まえて本年度はDes2-/-の表現型解析を進めた。その結果、Des2-/-はメンデルの法則に基づいた比率で生まれるが、約50%が生後10日頃より発育不良を呈し、2週間前後で死亡することが明らかになった。早期死亡群のDes2-/-の解析により、小腸においては、小腸上皮の頂端側膜を構成する主要なGSLであるasialo GM1が頂端側膜に局在せず、細胞内に異常な局在を示すことが明らかになった。腎臓においては、集合管の拡張が見出され、一部の個体において水腎症様の形態変化を認めた。神経系では、脳海馬体の歯状回最内層に細胞死の増加が見出され、一部の個体において脳室の拡大が認められた。これらの結果はphyto-GSLが小腸、腎臓、脳神経系においてその機能維持に重要であることを示唆する。しかしながらDes2-/-の半数は寿命が長く、表現型がばらついていることが大きな問題点である。今後は、マウスの遺伝的背景や、エピジェネチィック因子の影響などを考慮したさらなる表現型解析が必要である。
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Research Products
(6 results)