2010 Fiscal Year Annual Research Report
老齢脳における再ミエリン化機構の解明とミエリン再生療法の開発に関する研究
Project/Area Number |
20500348
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Gerontology |
Principal Investigator |
阿相 皓晃 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (30104160)
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Keywords | 神経科学 / 脳神経疾患 / 再生医学 |
Research Abstract |
老齢脳におけるミエリン形成機構の解明とミエリン再生療法の開発について研究を進めた。老齢脳では若齢脳に比べ再ミエリン化が起こりにくく、その原因の一つとしてミエリン形成担当細胞の前駆細胞(OPC)の数の減少によるものであると考えられてきたが、今回の研究の結果から老齢脳でもOPCが存在していることが明らかになった。これまで私たちは若齢脳でのOPCの増殖・分化機構に免疫グロブリンFc受容体とFynチロシンキナーゼがトリガー分子として関与していることを明らかにしたが、老齢脳でのOPCの増殖・分化にもFcR/Fynがトリガー分子として関与していることがわかったので、これらの分子をターゲットとするミエリン再生療法の開発に取り組み、漢方薬・人参養栄湯の構成成分の生薬・チンピにOPCの増殖・分化作用のあることを発見した。さらにその薬効作用機序の解明を行うためにFcR/Fynを欠損したミュータントマウスや老齢マウスあるいはカプリゾン投与による脱髄モデルマウスにチンピを投与してOPCの動態と脱髄回復効果について免疫組織化学的・生化学的手法を駆使して調べたところ、チンピ投与群で明らかにOPCの増殖・分化が促進され脱髄回復効果もあることが明らかになり、その作用機序はFcR/Fyn-Gprotein-MAPK-MBPのシグナル伝達系が関与しミエリン構成タンパク質のリン酸化MBPの21.5kDaと17kDaのアイソフォームが必須であることが判明した。また、FcR/Fynを欠損したマウスでは脱髄回復効果が認められなかったことから、チンピによるミエリン再生機序はミエリン形成分子機構のFcR/Fyn-small Gprotein-MAPK-MBPシグナルカスケードの調節/制御によって行われることが強く示唆された。
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Research Products
(2 results)