2008 Fiscal Year Annual Research Report
MST野における視覚信号および追跡眼球運動信号の座標表現
Project/Area Number |
20500351
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
SERGEI Kurkin Hokkaido University, 大学院・医学研究科, 助教 (00344466)
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Keywords | MST野 / 滑動性追跡眼球運動 / 運動視 / 座標表現 / 重力 / 耳石 / 単一ニューロン / 日本サル |
Research Abstract |
MST野は視覚の空間情報処理に必須の領域である。MST野は、滑動性追跡眼球運動にも必須であるだけでなく、視覚対象の動きの認知にも関与することが報告されているが、MST野が、認知(運動視)にも関わるかどうかについては研究者の間でいまだに意見の一致がない。MST野は前庭耳石器入力も受けるので、本研究では、MST野の滑動性追跡眼球運動情報あるいは、視覚の空間情報が、頭部中心座標で再現されているか、それとも重力中心座標(earth vertical)で再現されているかを明らかにすることにより、滑動性追跡眼球運動および運動視におけるMST野の役割を明らかにしようとした。最近の心理実験により視覚の空間情報の重力中心座標の再現には、運動視が関わることが示唆されているためである。このため、ニホンサルの全身を前額面で右あるいは左方向に40度傾けて、静的傾斜を与えることにより、2つの座標系を乖離させた。MST野の単一ニューロンを記録し、0.5度のスポット視標を追跡させることにより、滑動性追跡眼球運動関連ニューロンを同定した。また、空間で静止した視標を固視させながら、ランダムドットパターンをランプ状あるいは正弦波状に、種々の方向に動かすことにより、視覚応答を調べた。その結果、51個のMST野の単一ニューロンのうち、69%は滑動性追跡眼球運動と視覚刺激の両方に応答した。応答の最適方向は、大多数(80%)のニューロンで直立位と静的傾斜位においてほぼ一致した。残りの20%では静的傾斜によって眼球反対回旋から予想される範囲以上の最適方向偏位がみられたが、その平均は12.3度で、重力中心座標で推定される40度よりも極めて少なかった。以上より、MST野の滑動性追跡眼球運動関連ニューロンの大多数は頭部中心座標で滑動性追跡眼球運動情報およびそれに必須の視覚の空間情報を再現することが示唆された。
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Research Products
(12 results)