2009 Fiscal Year Annual Research Report
MST野における視覚信号および追跡眼球運動信号の座標表現
Project/Area Number |
20500351
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
KURKIN Sergey Hokkaido University, 大学院・医学研究科, 助教 (00344466)
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Keywords | 滑動性追跡眼球運動 / optic flow / MST / 頭部中心座標 / 静的傾斜 / 耳石器 / 最適方向 / サル |
Research Abstract |
滑動性追跡眼球運動はゆっくり動く小さな視覚対象を正確に追跡することに必要な運動系である。霊長類はそれにより、動く対象からの視覚情報を適切に取り込むことができる。MST野に滑動性追跡眼球運動関連ニューロンが存在し、耳石器を含めた前庭入力を受けて、視覚対象物の動きの認知に関わることが報告されているが、MSTが眼球運動信号や視覚信号をどのような座標軸で再現しているかは不明である。本研究は、滑動性追跡眼球運動および視覚情報を、MST野は頭部中心座標で再現するか、それとも重力中心座標で再現するかを明らかにすることを目指した。2頭のニホンザルを用い、覚醒下に全身を前額面で右、あるいは左方向に40度傾けて静的傾斜を与え、重力中心座標と頭部中心座標を乖離させた。静止した視覚パターン上で視標追跡を行わせて、51個の滑動性追跡眼球運動関連ニューロンを記録した。これらについて、視覚応答および滑動性追跡眼球運動関連応答の最適方向を同定し、正中立位と静的傾斜時で比較した。51個中35個(69%)は、滑動性追跡眼球運動とoptic flowによる視覚刺激の両方に応答し、滑動性追跡眼球運動のみに応答を示したニューロンが19%、視覚刺激のみに応答を示したのは10%であった。大多数のニューロン(41/51=80%)の、眼球運動および視覚応答の最適方向は、直立位と静的傾斜位でほぼ一致した。51個の最適方向の偏位の平均は、5度(±4度SE)であった。静的傾斜時に、個々のニューロンの最適方向と眼球反対回旋の方向との間に一定の関係は無かった。残りの10個の偏位は平均よりも大きかったが(平均12度、最大14度)、それでも、重力中心座標で推定される40度よりも極めて少なかった。以上の結果は、MST野が頭部中心座標で滑動性追跡眼球運動およびそれに必須の視覚情報を再現することを示唆する。
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Research Products
(20 results)