2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20500362
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
磯田 昌岐 The Institute of Physical and Chemical Research, 象徴概念発達研究チーム, 副チームリーダー (90466029)
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Keywords | 利他行動 / 共感 / 到達運動 / ニホンザル |
Research Abstract |
共感は利他行動の重要な誘発要因であると考えられている。いわゆるmirror neuron systemが共感の神経学的基盤を担うものとして注目を集めている。特に大脳皮質外側部(腹側運動前野と下頭葉小葉)は自己と他者の動作意図の共有に、大脳皮質内側部(特に帯状皮質)は自己と他者の感情の共有に関係すると考えられている。しかし、大脳皮質内側部運動野が動作内容や動作意図の共有あるいは共通理解に関与しているのかどうかについては明らかになっていない。 この点を明らかにするため、対座する2頭のニホンザルを同時に用いた役割交代課題を考案した。この行動課題では2試行毎に、行動選択・遂行役(Actor)と行動観察役(Observer)が入れ替わるため、行動実行と行動観察の機会が2頭のサルに等しく与えられた。計2頭のサルを被験者として上記課題を行わせ、前頭葉内側部(補足運動野、前補足運動野、ならびに前部帯状皮質を含む領域)から単一神経細胞活動を記録し解析した。その結果、ある一群の細胞集団は自己の動作で特異的な活動上昇を示し、別の細胞集団は他者の動作で選択的な活動上昇を示し、さらに別の細胞集団は自己の動作でも他者の動作でも等しく活動することが明らかとなった。 以上の結果は、1)前頭葉内側部がいわゆるmirror neuron systemに属し、自己と他者による行動内容や行動意図の共有に関与する可能性、2)前頭葉内側部には動作主特異的な情報が表現され、自己の動作か他者の動作かの識別に関与する可能性、を示唆している。
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