2009 Fiscal Year Annual Research Report
細胞内プール可視化によるアンパ受容体トラフィッキング制御機構の解明
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20500363
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
山口 和彦 The Institute of Physical and Chemical Research, 記憶学習機構研究チーム, 副チームリーダー (00191221)
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Keywords | 小脳 / プルキンエ細胞 / シナプス可塑性 / 長期抑圧 / アンパ型グルタミン酸受容体 / スパイン / 樹状突起 / トランスロケーション |
Research Abstract |
本年度は高い感染効率を示すレンチウイルスベクターを用いて、培養小脳プルキンエ細胞に緑色蛍光蛋白質GFPを発現させつつ、赤色蛍光蛋白質mCherryで標識したアンパ受容体GluR2を、改良型シンドビスウイルスベクターを用いて同時発現させることにより、アンパ受容体の細胞内の相対運動を観察することを目的とし、ほぼ所期の目標を達成することができた。この結果、運動学習の基礎メカニズムであるシナプス長期抑圧(LTD)の誘導に伴い、細胞内のGluR2が樹状突起スパイン部からシャフト部ヘトランスロケートすることが証明できた。培養プルキンエ細胞におけるLTDはグルタミン酸と高K^+濃度溶液の同時投与により誘導した。この刺激はスパイン形態には影響を与えず、GluR2のトランスロケーションを引き起こした。LTDを誘導しない刺激(グルタミン酸単独投与、高K^+濃度溶液単独投与)ではアンパ受容体のトランスロケーションは見られなかった。また、LTDを阻害する代謝型アンパ受容体阻害剤、カルシウムチャネル阻害剤、C型蛋白質リン酸化酵素阻害剤は、化学刺激によるGluR2のトランスロケーションを阻害した。また、このGluR2のトランスロケーションには、アクチンの脱重合過程が必要であることがわかった。この研究成果の意義は、小脳プルキンエ細胞のLTDにおいて、初めてGluR2のトランスロケーションがスパイン形態の変化なしに生じることを示した点である。運動学習の中には生涯にわたり永続する記憶もあり、プルキンエ細胞シナプスにおいて、何らかの構造変化が生じることが想定されていたが、この発見は初期の機能変化から長期の構造変化に至る中間反応の可能性があり、今後の発展が期待できる。
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Research Products
(5 results)