2009 Fiscal Year Annual Research Report
歩行運動中枢を構成する脊髄抑制性ニューロンの同定と生理学的解析
Project/Area Number |
20500365
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
西丸 広史 University of Tsukuba, 大学院・人間総合科学研究科, 准教授 (20302408)
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Keywords | 神経科学 / 生理学 / 脊髄 / 歩行 |
Research Abstract |
哺乳類の歩行の際の駆動力を生み出す基本的な筋活動パターンは脊髄に局在する神経回路網で形成される。しかしどのような神経機構によってこのパターンが生み出されているのかはほとんどわかっていない。本研究では、遺伝子改変マウスを用いて歩行運動の際の左右の後肢、および屈筋・伸筋の交代性のパターンの形成に重要な役割を担っている脊髄抑制性ニューロンの局在と電気生理学的性質、および軸索と樹状突起の形態を明らかにすることを目的としている。本研究計画二年目の平成21年度は、GABA作動性挿制性ニューロンが特異的に蛍光色素蛋白質green fluorescent protein (EGFP) を発現するGAD67-EGFPノックインマウス新生児の脊髄摘出標本において、腰髄腹外側に局在するGABA作動性抑制性ニューロンの細胞膜の電気生理学的性質、および歩行運動様リズム活動の際の発火パターンを調べた。その結果、腰髄腹外側に局在するGABA作動性の抑制性脊髄介在ニューロンの新規グループを同定した。このニューロン集団は、NMDAおよびセロトニンによって誘発される歩行運動様リズム活動の際にリズミックに発火する。この際、それぞれのニューロンが発火するタイミングはこれまで知られている他の介在ニューロンのように、リズミックな興奮性のシナプス入力のタイミングによるのではなく、むしろリズミックな抑制性シナプス入力のタイミングによって決定されていることが明らかになった。さらにこれらのニューロン群は過分極によって活性化し、脱分極するイオンチャンネルを発現しており、こうした抑制性シナプス入力による制御に好都合であると考えられた。形態学的解析によって、これらのニューロンは軸索および樹状突起を運動ニューロン群の近傍に投射しており、腰髄内において、歩行運動神経回路網の局所回路の活動パターン形成に深く関与していることが示唆された。これらの成果はこの成果は2009年10月に開催されたThe Society for Neuroscience (Neuroscience 2009)において発表した。
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Research Products
(2 results)