2008 Fiscal Year Annual Research Report
イノシトールリン脂質による容積感受性クロライドチャネル調節機構の解明
Project/Area Number |
20500366
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
山本 信太郎 Saga University, 医学部, 助教 (40336110)
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Keywords | 膜電流 / イオンチャネル / 細胞内情報伝達 / インスリン / イノシトールリン脂質 / 糖尿病 / 細胞容積調 / 心室筋 |
Research Abstract |
様々な不整脈が発生し、修飾因子が是正されているにもかかわらず、不整脈がコントロールされないことも多い。このことから病的心筋では心筋イオンチャネルの電気生理学的特性の変化が示唆されており、我々はクロライドチャネルが重要な役割をしていると考えている。本研究では、膜伸展によるイノシトールリン脂質(PIP2、PIP3)を介した容積感受性クロライドチャネル(VRAC)の調節を明らかにすることで、イノシトールリン脂質とVRACと病態モデルとの関係の全体像を明らかにすることを目的とした。なお、平成21年度に計画していたIDDMモデル動物における検討が、結果として先行し論文報告となった。このため、当初、平成20年度に計画していたα1受容体刺激による心筋VRACの調節の論文報告は平成21年度の予定である。 方法としては、正常マウスまたは病態モデルマウスの心室筋細胞を単離し、patch-clamp法による電気生理学的、薬理学的な検討、ビデオ画像解析による細胞容積変化の検討を行った。その結果、IDDMモデルマウスでは、心筋VRAC電流の減少を認めた。この減少は、その細胞をインスリン存在下で数時間培養することで、回復した。更に、減少したVRAC電流は、PIP3の細胞内灌流法によっても回復した。 インスリン刺激は、PI3キナーゼを刺激し、PIP2からPIP3への変換を促進することが知られているので、インスリン分泌の著しく低下したIDDMモデルでのVRAC電流の減少は、細胞内PIP3の減少によることが示唆された。VRACは、細胞容積調節に加え、様々な機能が報告されている、生物にとって重要なチャネルであるが、その分子実体や詳細な調節メカニズムは未だ明らかでない。今回の報告は、このVRACの調節メカニズムに、新たな知見を加えるものである。
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