2010 Fiscal Year Annual Research Report
心筋収縮構造の再構築によるスターリングの心臓法則の分子メカニズムの解明
Project/Area Number |
20500368
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
福田 紀男 東京慈恵会医科大学, 医学部, 准教授 (30301534)
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Keywords | 生理学 / 生物物理 / 細胞・組織 / 生物・生体工学 / 生体分子 |
Research Abstract |
心筋生理学において重要なFrank-Starlingの心臓法則は、心筋細胞レベルでは、サルコメアが伸展されればされるほど大きな力を発揮するという「筋長効果」に置き換えて考えることができる。「筋長効果」は筋肉が発揮する代表的な非線形高次機能であり、当該研究分野において一世紀の謎とされていた。本年度、申請者らは、生理学研究に分子論的アプローチを積極的に導入し、筋長効果の分子メカニズムを解明することを試みた。すなわち、心筋サルコメアを一度解体した後にタンパク質分子を組み合わせて人工的に再構築、高次機能を検出するin vitroシステムを作り上げ、サルコメア構造のナノレベルの変化が筋長効果の発現に寄与している仕組みを明らかにした(Terui et al. ,2010)。また、筋長効果を定量的にシミュレートできる数理理論体系を構築した(Terui et al., 2010 ; Ishiwata et al., 2011)。ここで用いた数理解析法は、生体分子の"熱的ゆらぎ"に基づくものであり、他の生命科学研究分野にも広く応用され、ナノとマクロの間に存在する階層構造を橋渡しする、普遍的な情報を提供するものと期待される。このモデルは、筋収縮においても、自励振動(SPOC)の定量的なシミュレートを可能にする。さらに、心筋細胞に量子ドットや蛍光タンパク質発現系を応用し、収縮にともなうサルコメア長変化を10nmの精度で計測する実験系を構築することに成功している(論文投稿中)。
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