2010 Fiscal Year Annual Research Report
動物実験の人道的エンドポイント構築のためのテレメトリー法によるエビデンス集積
Project/Area Number |
20500375
|
Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
片平 清昭 福島県立医科大学, 医学部, 准教授 (90045774)
|
Keywords | マウス / ラット / 人道的エンドポイント / エビデンス / テレメトリー / 体温 / 心拍数 / 血圧 |
Research Abstract |
本研究の目的は人道的エンドボイントの構築・確立をさし、マウスラットの各種実験処置に係わる苦痛の客観的評価根拠であるエビデンスを集積することである。初年度では生理指標測定のためのテレメトリーシステム活用に必要なマウスでの体内埋込み送信器の合理的装着手技や長期間のデータ取得手技を確立し、次年度以降、血圧用送信器や心電図用送信器、体温用送信器の再生を行い、同一条件下のデータ取得個体数を増やした。 マウスやラットでのケージ交換による体温上昇は、血圧や心拍数、自発活動量の同時測定結果から交感神経活動の亢進によることを明確にした。記憶に関連した脳研究領域でモリス型水迷路が多用されているが、これらの迷路は、本来ラット用のものであり、マウスにおける水迷路実験の苦痛度の評価のエビデンスが明確でないことから、マウスでの水温による体温低下について検討した結果、28℃の水温ではラットの場合とは異なり、水浸後ただちにマウスの体温は低下した。32℃程度では体温低下は顕著でなく、20℃の水温では数分後に低体温状態となり生命維持が危ぶまれる状況も観察された。特にC57BL/6J系では低体温になりやすい結果を得た。研究最終年度にはC57BL/6J系の例数を追加した実験を進め、併せて麻酔時や実験処置後の心拍数や体温の経過観察から生体への負担程度についても類推した。 これらの結果から、マウス特にC57BL/6J系にとって水迷路実験の苦痛度は高く設定すべきこと、水温設定や実験後の保温にも配慮すべきことが示唆された。さらに、テレメトリー送信器を体内に埋込んだオスマウスをメスと同居させた場合、相手のメスは通常の場合と同様に妊娠・出産が可能であり産仔にも臨床所見上の以上は認められなかった。テレメトリー送信器を体内に埋込んだメスマウスにオスを同居させた場合、4例中1例に出産時死亡があったものの他の3例では通常の出産および授乳行動が観察された。また、これまでに報告されている国内外の関係論文や文献を収集し、人道的エンドポイント関連のエビテンスの類別化を進めた。これらの成果を研究者が所属する大学での動物実験計画書に反映させ、適切な動物実験の実施への活用を図っている。
|