Research Abstract |
予測的姿勢制御(Anticipatory Postural Adjustment APA)は、随意運動に先立って姿勢筋に出現する予測的筋活動である。今年度は、視線移動、視覚刺激による姿勢制御の学習効果をみる予備実験として、健康若年者におけるリーチ動作の繰り返しにより, パフォーマンスだけでなく, 動作開始直前の姿勢筋の筋活動であるAPAにも変化が見られるかどうかを調べた. さらに, その変化は一時的な適応性変化なのか, 学習による効果なのか5目間にわたって調べた. 右利きの健常成人6名(21±1歳)を対象とし, 立位から手がとどく最大距離に置かれた目標物まで素早いリーチ動作をさせた. リーチ動作を100試行繰り返させ, 下肢筋の筋活動, 体重心, 足圧中心を記録した. リーチ動作直前に起こる下肢筋の筋活動開始時間と, リーチ動作開始時間までの筋活動量を算出した. 同様の手法で3日続けて記録した後, 休息を1日取った翌目にも記録を行い, 繰り返しによる予測的筋活動の変化と学習効果を調べた. 第1日目, リーチ動作のパフォーマンスは繰り返しにより有意に向上した. 予測的な筋活動もまた繰り返しにより有意差をもって早期に起こるようになり, その筋活動量も増加した. 予測的な筋活動の変化はパフォーマンスの向上よりも少ない繰り返しで起こった. また, 予測的な筋活動量はリーチ動作の運動時間と有意に相関した. 第2-3日目の1-10試行における1下肢筋の予測的な筋活動量は, 初日と比較して有意に増加し, その効果は休息を1目取った後題日目においても持続した. これらのことは, 予測的姿勢制御の変化がパフォーマンスの向上に関与する可能性を示唆する. また, その変化は一時的な適応性変化ではなく, 長期増強などによる学習による効果である可能性が示唆される.
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