2008 Fiscal Year Annual Research Report
聴覚障害児の音声言語獲得と文字言語獲得の長期経過に関する研究
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20500442
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
能登谷 晶子 Kanazawa University, 保健学系, 教授 (30262570)
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Keywords | 聴覚障害児 / 音声言語力 / 文字言語力 / ウエクスラー知能検査 |
Research Abstract |
聴覚障害児の言語獲得は従来の聴覚口話法では十分な日本語獲得が困難な場合が多いことから、最近では聴覚障害児の第一言語を手話の獲得とし、その後6歳頃から読み書きの指導を行う方法も取り入れられている。一方で人工内耳の早期導入により、聴覚障害児の音声言語獲得に向けての研究も進んでいるが、従来から指摘されている文章の理解や助詞の使用法についての不十分さが依然として問題となっている。そのような現状の中で、当該研究の目的は聴覚障害幼児の日本語獲得訓練に文字言語を早期から導入することの意義を明らかにすることである。本年度は乳幼児期に文字言語を早期から導入した方法である金沢方式で訓練を受けた聴覚障害児に対して知能検査(WISC-IIIまたはWAIS-III)を実施した。また、補聴器でも十分に言葉が聞き取れない対象者向けに、文字による課題提示のためにすべての問題を文字化したものも作成した。実施状況:10歳以上に達した17名全員音声言語による課題提示で検査が施行できた。対象者の平均年齢は12.8(SD=10.83)歳、平均聴力レベルは86.0(SD=24.0)dB,知能検査の言語性IQの平均値は90.0(SD=18.0)、動作性IQの平均値は106.0(SD=11.0)であった。言語性課題の6項目と動作性IQ値、訓練開始年齢、平均聴力レベルとの関係を統計処理した結果、言語性項目の「理解」と訓練開始年齢間に有意な関係を認めた(p<0.039)。また、動作性課題の7項目とVIQ値、訓練開始年齢、平均聴力レベルとの関係を統計処理した結果、動作性項目の「記号」とVIQ値間に有意な関係を認めた(p<0.002)。対象児の音声言語の獲得は多くのもので健聴者の平均レベルにあったことから、聴覚障害児の音声言語の獲得は健聴児並みに達することの可能性があることがわかった。
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