Research Abstract |
ヒト骨格筋由来筋芽細胞(human skeletal muscle myoblast : hSMM)を筋管細胞へ分化誘導する条件を検討した.hSMMは,これまで使用していたラット骨格筋筋芽細胞株(L6)と比較すると筋管細胞への分化や発達が難しかったためである.通常の1G環境下にて,Typel collagenでコーティングした培養皿を用い,分化誘導培地にウシ胎仔血清を低濃度添加して分化誘導できる条件を設定した.しかし,模擬微小重力発生装置(3D-クリノスタット)での培養には,一般的な培養皿ではなくOptiCell(Nuncより販売)を使用する.実験では,1G環境にてhSMMを増殖させ,コンフルエントになった後,筋分化誘導を開始するが,OptiCellではコンフルエントにするのが難しかった.そのため,1G環境で分化誘導をしても,10^<-3>G環境で分化誘導しても,顕著な差を観察,検出することができなかった. 一方,マウスES細胞,マウスやラットの骨髄から採取した骨髄間質細胞(筋に分化可能なMSCsを含むとされる)を微小重力環境で培養した研究では,全ての細胞において,微小重力環境では分化が抑制され,未分化状態が維持される結果が得られた.ヒト正常骨芽細胞や破骨細胞でも,微小重力環境で分化が抑制されることから,条件が整えば,ヒト骨格筋由来筋芽細胞でも筋分化が抑制される可能性が高い.また,マウスES細胞とhMSCsのマイクロアレイ解析から,微小重力環境で幹細胞が未分化維持できる共通の要因の一つとして,アクチンや細胞接着分子等の細胞骨格構成に関連する遺伝子が関与していると考えられた. 次年度以降,引き続hSMMをOptiCellで培養,分化誘導できる条件を探るとともに,L6を使い,細胞骨格に着目した解析を行って筋萎縮メカニズムの検討を行いたい.
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