Research Abstract |
ラット骨格筋由来の筋芽細胞を増殖させた後,分化誘導を行った.分化誘導開始時(Day O)に,通常の1G環境で分化誘導を行うコントロール群(group 1G)と,重力分散型模擬微小重力発生装置(3D-clinostat)を用いた微小重力環境(10^<-3>G)で分化誘導を行う実験群(group CL)の2群に分け,5日間培養した(Day 5).Day5の細胞をそれまでと同じ重力環境で培養する2群(group 1G/1G,group CL/CL)および重力環境を入れ替えた2群(group 1G/CL,group CL/1G)に分け,さらに5日間培養した(Day 10). Day10において,group 1G/1Gで太い筋管細胞が観察され,group CL/CLでは筋管細胞は形成されなかった.group CL/1Gでは,Day 5で抑制されていた筋分化が促進された.逆にgroup 1G/CLでは,進んでいた筋分化が後退するような形態変化が観察された. 筋分化マーカーの解析結果からも,微小重力環境では筋の分化が抑制され,重力環境では筋が分化していることが示唆された.さらに,筋分化抑制マーカーであるmsx1のmRNAが,微小重力環境の実験群で強く発現したことからも,微小重力による筋分化抑制が強く支持された. 細胞内シグナル伝達系のp38^<MAPK>は,細胞の分化に関わる経路である.group 1G/1Gおよびgroup CL/1Gでは,p38^<MAPK>の活性がみられたが,group CL/CLおよびgroup 1G/CLでは,活性がみられなかった.特に,Day 5に微小重力環境から1G環境に戻し,その後,筋分化が加速的に進んだgroup CL/1Gでは,p38^<MAPK>が強く活性化された. 微小重力による筋分化抑制および重力による筋分化には,p38^<MAPK>経路が関与している可能性が示唆された.
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