2010 Fiscal Year Annual Research Report
小児吃音の類型的鑑別の基礎資料としてのADHDにおける非流調性発語に関する研究
Project/Area Number |
20500461
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Research Institution | Tokyo University of Social Welfare |
Principal Investigator |
若葉 陽子 東京福祉大学, 心理学部, 教授 (20014730)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮尾 益知 国立成育医療研究センター, こころの診療部, 医長 (70120061)
舟橋 敬一 国立成育医療研究センター, こころの診療部, 医師 (30383269)
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Keywords | ADHD児 / WISCIII / 全IQ / 言語性IQ / 語用的能力 / コミュニケーション / 適切さの度合 / 多数事例の検討 |
Research Abstract |
学童期のADHD児は、社会的場面での不適応が最も問題である者が多くみられる。そのため、学校生活への適応を高めていくためには、幼少期から学童初期を含む期間のADHD児のコミュニケーション発達、言語発達について、対人関係能力、社会性の発達、学習活動への参加などの観点からみて詳細に明らかにしていくことが必要と考え、言語発達の様相の検討、コミュニケーション場面における語用的能力の評価を実施した。 まず、ADHDと診断された53名のうち、PDDの傾向がみられず、精神発達遅滞、虐待、脳波異常等のない22名(8歳~9歳)について、WISCIIIの結果から主に言語性IQの検討を行うとともに、特にIQ分布の傾向をみた。全IQ89~109の5名については、初診時情報等の関連、検査時のコミュニケーション状態を観察した。この結果では、全IQ100以上は11名であり、全IQ100未満は11名であった。言語性IQは1名以外平均域以上であるとともに、米国での3研究(Prifiteriaら1993,Schweanら1993,Anastopoulosら1994)の結果とは一致せず、言語性IQが動作性IQより高い傾向があった。群指数については、当然ながら言語理解より知覚統合が低く、注意記憶・処理速度は2名が低い以外は概ね平均以上であった。下位検査評価点の分布は全IQが低いほどバラつきがあり、6以下のものは2名であった。5名については、初診時はADHD特有の主訴があげられているものの、検査時の会話では実用上著名な問題は挙げられていなかった。 また、4名(7歳)の母子自由遊戯場面の行動観察を行い語用的能力の適切さの評価を行ったが、個人差が大きく、コミュニケーション成立の範疇内のものと範疇外のものがあり、その適切さの程度の度合いを詳細に検討するとともに、社会的不適応の程度との相関に注目しながらコミュニケーション成立の程度を規定する要因についてなお追及を続けている途上にある。今後多数事例での検討が必要である。
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