2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20500473
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Research Institution | Kio University |
Principal Investigator |
今北 英高 畿央大学, 健康科学部, 教授 (00412148)
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Keywords | 頸髄損傷 / 呼吸機能応答 / 横隔膜 / 筋電図 |
Research Abstract |
高位脊髄損傷者では、胸髄レベル支配の呼気筋が麻痺することで有効な自己排痰(有効な咳)が困難となり、無気肺や肺炎が生じる。これらの肺合併症は生命の維持に関わる重要な問題である。本研究はWistar系ラットを用いて頚髄損傷モデルを作成し、髄節レベルにおける呼吸機能への影響を詳細に分析することを目的とした。本年度は最終年度であり、研究計画に従って頚髄損傷モデルの作成、脊髄半切モデルの作成、分析項目である両側横隔膜筋活動および呼吸機能の分析、血液ガス測定、免疫組織化学実験等に関して以下のとおり実施した。 頸髄全切モデルは平成21年度から継続し、再現性のあるデータとするため対象数を増やし、そのモデルでの呼吸機能や横隔膜筋活動等を測定した。本実験結果として、C3レベルでは%VTが24%にとどまり、%VEは10%となった。横隔膜の麻痺が強くなるこのレベルの損傷では換気量は著しく低下し、生命維持にも大きく影響を及ぼすことが示唆された。C5レベルは神経支配として横隔膜は十分に機能しているレベルと考えられ、換気量は頚髄損傷後に70-80%となったが、横隔膜の筋活動については、損傷前よりも21%増加させていた。これは下位頚髄レベルや胸髄レベルの支配を受ける呼吸筋や呼吸補助筋における麻痺を補い、換気量を維持しようとした反応であると推察される。C7レベルでは%VTは94%、%VEは84%となり、換気量の維持が最もなされていた。 脊髄半切モデルでは、C2レベルを作成した。半切直後はSp02にて12%の有意な低下が認められたが、心拍数、呼吸数には低下傾向は見られたものの有意ではなかった。2週間後にはSp02においても有意な差は認めれず、正常値に回復していた。α-bungarotoxin-tetramethylrhodamineによるアセチルコリンレセプターの蛍光染色においても軽度の角ばった形態的特徴は観察されたのみであった。これは脊髄半切によって対側のintactなルートが部分的に半切側への神経活動を補ったという先行研究の結果を支持するものであった。
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