Research Abstract |
寝たきり生活者に対する介護者の負担を軽減させるため,主に家庭内で用いる介護システムについて,最終年度の開発をおこなった. 1) 今までに,失禁者に対応可能なトイレ移動ロボットを開発してきたので,最終年度は,ロボットの移動制御実験に基づく走行性の検証をおこなった.マイクロコンピュータを用いたシステムによって,直進,旋回,回転の基本的な自律移動に加えて,廊下などの比較的長距離の自律移動を検証した. 2) トイレ移動ロボットの機構については,居宅のトイレの洋式便座の上までロボットの脚が伸長し,ロボットの上部に取り付けた排泄物タンクの位置を高くすることができると同時に,脚が横方向へ広がることで,ロボットに搭載された簡易トイレに保存された排泄物を居宅のトイレの真上から排出できる可能性を見出した.本体の伸縮機構にパンタグラフ機構を用いたことにより,小型化が実現し,トイレ移動ロボットを車椅子の下に収納することも可能となった. 3) 介護者の手動によるハンドル操作により,寝たきり生活者を車椅子からベッド,簡易入浴槽などに移送することができる手動リフトを開発した.操作者は手動リフトを動かしながら,簡易ベット(電動車椅子)に被介護者(被験者)を寝かせた状態から,容易に被介護者を持ち上げることが可能となった. 4) 手動リフトを使って,簡易浴槽を設置した箇所まで被介護者を移送させて,ハンドル操作により,簡易浴槽の中に溜めたお湯の中に,フォーク上に乗せられた被験者を浸けることが可能になった.このリフトは,モーターや電源を必要とせず,フォークの動作速度が遅いため,安全性が高い. 以上,寝たきり生活者の介護負担を減らすための,多機能型電動車椅子(簡易ベット),簡易浴槽,手動リフト,およびトイレ移動ロボットからなる家庭用介護システムの基本的な実証試験を完了した.そして,このシステムによる家庭内における新たな介護支援の可能性を実証した.
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