2009 Fiscal Year Annual Research Report
実践を基盤とした教師による体育カリキュラム開発の方法に関する研究
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20500525
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
丸山 真司 Aichi Prefectural University, 教育福祉学部, 教授 (10157414)
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Keywords | 体育カリキュラム / 器械運動クロスカリキュラム / ドイツのスポーツカリキュラム / Bewegte Schule |
Research Abstract |
本研究ではカリキュラムの自己創出性という観点から,実践を基盤にした教師による体育カリキュラム開発の方法を理論的実践的に明らかにするとともに,体育教師のカリキュラムデザイン能力の形成に寄与する知見を得ることを目的とした。とりわけ本年度(平成21年度)は,カリキュラム開発の方法を仮説的に設計するために,(1)カリキュラムの自己創出サイクルを意識した典型的な体育カリキュラム開発の事例を実践者と共同して分析・検討する。とりわけ教材カリキュラム開発に注目して考察した。(2)さらに、ドイツにおける学校スポーツカリキュラム開発と"BwegteSchule"(運動に着目する学校)の関連について、文献・資料及び現地調査から考察した。 (1)器械運動実践研究で全国的に注目されている山内基広氏(埼玉県小学校)が氏の30余年に及ぶ実践研究から引き出した器械運動教材の総合カリキュラム(器械運動クロスカリキュラム)を検討した。.器械運動クロスカリキュラムは、小学校6年間の限られた授業時間の中で、マット運動、鉄棒運動、跳び箱運動教材を個別に扱わないで、各教材の技術系統をベースに置きながら、学習(集団)の発展像を視野に入れつつ、3つの教材を有機的にクロスさせてトータルに器械運動を学習させようと考案されたカリキュラムである。その器械運動クロスカリキュラムの特徴を検討した上で、器械運動クラスカリキュラムの可能性と課題について論じた。器械運動領域が目指す目標を設定し、各種目教材(マット、鉄棒、とび箱)の技術系統を縦軸に置き、それを串刺す(クロスする)横軸に学習内容を置き、子どもの学習発展段階に応じて重点教材を組み立てて系統化していくことが器械運動クロスカリキュラム編成の論理となる。教材クロスカリキュラムは、技術学的発想から生み出されるものではなく、個別種目教材の技術学習を重視しつつも、教科内容研究に基づく授業実践論を基盤に作られるカリキュラムであると言える。山内の器械運動クロスカリキュラムは、その内容や課題、教材間のつながりについては技術学的視点からは検討の余地を多く残しでいるし(冬大会、平田報告参照)、文化内容の学習の欠落といった問題もあるにせよ、今後の教材クロスカリキュラム研究にとって意味ある、そして可能性のあるモデル提起であった。 (2)ここでは、Bewegte Schuleが主張された背景、Bewegte Schuleが学校スポーツカリキュラム開発に与える影響と課題について考察した。Bewegte Schuleが主張された背景には、(1)学校スポーツへの教育学的観点が強調されたこと、(2)学校スポーツの現状から派生する学校スポーツの多様な意味づけ傾向、(3)学校スポーツの学校生活(学校プログラム)への組み込みの意識化、(4)学校スポーツの「正当化」や説明責任が意識される中で、カリキュラム開発において学習対象が「スポーツ」から「運動、プレイ、スポーツ」へと拡大したことがあげられる。Bewegte Schuleの主張や活発な論議は、学校スポーツカリキュラム開発に刺激を与える効果を持っていたと考えられる。
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