2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20500529
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Research Institution | Tokyo Women's College of Physical Education |
Principal Investigator |
金子 一秀 Tokyo Women's College of Physical Education, 体育学部, 教授 (40185921)
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Keywords | 身体知 / 体育教師 / 身体発生 / 能動的 / 受動的 |
Research Abstract |
平成20年度は、体育の教育学的意味を発生運動学の立場から論考し、原著論文として「体育としての身体発生の意義(伝承8号)」を発表した。研究成果としては、従来の体育の目標は健康体力づくりと因果を強く結び、技能習得の問題は運動に親しむ態度としての基盤づくり程度であった。生涯にわたり運動に親しむ態度を養うとしても、その基礎となる技能はミニマムの運動課題の達成が目標である。生涯いろいろなスポーツに関心を持ち充実した運動生活が送れるための基盤づくりであれば、その基礎技能は何かということが検討されなければならない。しかし、技能の基礎は、運動課題と自然科学的因果を結び要素化した身体条件へとすりかわってしまう。いまだ、要素化された身体条件を統合すれば運動技能が習得できるという誤った考え方は根強く残っている。 長い間不問に付してきた体育の教育的意味は、このような機械論的因果を前提とする限り健康体力づくりから脱却できない。そこで、運動のための運動理論としての発生運動学の立場から、身体知の形成という「自己運動」の基本構造から体育の教育学的意味を再考した。その結果、我々が運動を行うこととは、動物が芸を覚えることと違いそこに能動的な身体知の関わりを持つことが浮き彫りになった。身体知に能動的に関わり運動形態(動感形態)を形成していくことこそ人間にとっての運動習得であるから、我々は運動を文化として伝承してきたのである。そのような自らの身体との対話もなく要素化した身体条件を受動的身体知で構成していくことは、我々の身体知の形成は動物が芸を覚えるレベルと同等になってしまう。身体発生という独自領域を排除した体育における技能習得は、はたして人間がおこなう教育として展開しているのだろうか。この基本問題に厳密に切り込まなければ、体育という教科は教育の世界から排除されてしまうのではないだろうか。
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Research Products
(1 results)