Research Abstract |
本研究では,ブピバカイン投与による筋損傷後の回復過程において,FGF-1〜FGF-8の発現とMyoD familyおよびcell cycle markerの発現との関連性を調べることで,各FGFの筋成長における増殖過程および分化過程における役割について検討を行った。実験動物として8週齢のWistar系雄性ラット用い,足底筋にブピバカインを投与した群と生理食塩水を投与した群を作成した。ブピバカイン投与および生理食塩水投与後,12時間,24時間,48時間,72時間に足底筋を摘出(各n=6)し,筋損傷後の回復過程におけるFGP-1〜FGF-8と,MyoD family,cell cycle markerのmRNA発現について観察した。mRNA発現は,FGF-1,FGF-2,FGF-3,FGF-4,FGF-5,FGF-6,FGF-7,FGF-8,MyoD,myogenin,PCNA,p21の各遺伝子を対象に行った。ブピバカイン投与群は,0.5%のブピバカインを0.5ml足底筋に投与することによって実施した。生理食塩水投与群は,滅菌生理食塩水を0.5ml足底筋に投与し,コントロール群として役立てた。mRNA発現とタンパクとの対応やその局在を調べるため,FGF-5とFGF-7について免疫組織化学染色を施した。MyoD mRNAとPCNA mRNAはブピバカイン投与24時間後に増加し始めた。myogenin mRNAとp-21mRNAはブピバカイン投与48時間後および72時間後に増加し始めた。このことから,ブピバカイン投与24時間後から筋の増殖過程が,48時間後から分化過程が進行していることが示唆された。FGF-1,FGF-5,およびFGF-7の各mRNAは,MyoDやPCNAと同じタイミングで発現量を増加させた。FGF-2,FGF-3,FGF-4,FGF-6,およびFGF-8の各mRNAは,MyoD familyやcell cycle markerの各mRNA発現と対応していなかった。FGF-5とFGF-7に対する免疫組織化学染色において,FGF-5はおもに細胞外マトリックスに,FGF-7では細胞外マトリックスとともに未成熟な筋細胞の核に発現がみられた。これらの結果から,筋損傷後の回復過程において,FGF-7の重要性が明らかになるとともに,FGF-7は筋の増殖過程を刺激することで,筋再生に貢献している可能性が示唆された。
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