2010 Fiscal Year Annual Research Report
炭酸水による血管拡張作用および温熱作用の機序解明-スポーツ科学への応用-
Project/Area Number |
20500586
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Research Institution | Aichi Medical University |
Principal Investigator |
西村 直記 愛知医科大学, 医学部, 講師 (40278362)
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Keywords | 高濃度人工炭酸泉 / メントール / カプサイシン / 温度感覚 |
Research Abstract |
炭酸水への浸漬時には同水温でのさら湯への浸漬時よりも温かく感じることが知られているが、これはCO_2が皮膚の温受容器を興奮させ、冷受容器を抑制させることによると考えられている。本研究は冷受容器および温受容器を興奮させる効果があることが知られているメントールとカプサイシン塗布後の炭酸水への浸漬が浸漬部位の温度感覚におよぼす効果について検討した。室温26℃、相対湿度40%に設定した人工気候室内にて行った。10%~20%ハッカ油溶液(メントール30%以上含有;健栄製薬)を両側の前腕屈側部位に塗布(約7×5cm)し、10分間の椅座位安静後に右前腕を炭酸水(1000ppm)に、左前腕をさら湯に10分間浸漬させた。退水後は直ちにタオルで水分を拭き取り、安静時と同じ状態で10分間の回復をとらせた。後日、同じ方法にて0.1%~0.5%カプサイシン溶液(カプサイシン65%/ジヒドロカプサイシン35%;アルドリッチ社)を塗布した時の変化を観察した。水温はいずれも33℃とした。実験開始時から実験終了時まで、浸漬部位での温度感覚(7段階)および痛みの感覚(VAS:10段階)の聞き取りを2分毎(浸漬中は1分毎)に行い、数値化して演算処理をした。尚、メントール実験とカプサイシン実験は、少なくとも24時間以上の間隔をおいて行った。メントール塗布部位での浸漬中の温度感覚は、炭酸水およびさら湯ともに冷感を感じていたが、冷感はさら湯よりも炭酸水の方がより弱かった。これは、炭酸水ではCO_2による冷受容器の抑制効果とメントールによる刺激効果が相殺された結果であると推察される。カプサイシン塗布部位での浸漬中の温度感覚は、ほとんどの被験者がさら湯よりも炭酸水でより大きな温感を感じており、塗布部位と塗布していない浸漬部位との温度感覚の差は、さら湯よりも炭酸水の方がより大きかった。これはCO_2による温受容器の刺激に加え、カプサイシンによる刺激が、温感を促進したものと考えられる。 以上、メントールおよびカプサイシン塗布部位では、炭酸水およびさら湯への浸漬により異なる温度感覚を示したことから、CO_2が温度受容器に直接または間接的に作用していることを裏付けることになる。
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