Research Abstract |
これまで、運動習慣を有する高齢者と若年成人において夏季スポーツ活動前後の血栓形成関連因子について比較してきた. 本年度は,若年成人15名について,夏季スポーツ活動時の脱水状態と血栓形成関連因子との関連性を検討した.その結果,VWF抗原量は練習前の72.8±15.6%に比し,練習直後に127.6土22.5%,練習終了1時間後に122.4±21.2%と有意に増加した.VWF凝集能についても練習前の87.4±12.2%に比し,練習直後に133.3±19.8%,練習終了1時間後に126.9±20.7%と抗原量と同様に有意に増加することが認められた.一方,VWFを分解する酵素活性(ADAMTS13活性)は練習直後の74.1±16.0%から練習終了1時間後に67.2±19.2%と低下する傾向が見られた. 次に練習前,直後ならびに終了1時間後のヘマトクリット値(HCT)とVWF抗原量,VWF凝集能,およびADAMTS13活性との関係についてみると,HCTとVWF抗原量との間に絶対値(r=0.39,p<0.05)および運動前後の変化量(r=0.45,p<0.05)に有意な正の相関関係がみられ,特に練習前から練習終了1時間後にかけてのHCTとVWF抗原量の変化量との間には高い相関関係が認められた(r=0.74,p<0.01).また,練習前から練習直後のHCTの変化量とVWF凝集能の変化量との間には正の有意な相関傾向がみられた(r=0.38,p=0.09).これらの結果は,HCTからみた脱水の程度が高いものほど,VWF抗原量ならびにVWF凝集能が高く,血栓を形成しやすい傾向にある可能性を示唆するものである. 今後、これらの関係の老化の影響および季節の影響について検討する。
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