2009 Fiscal Year Annual Research Report
糖尿病発症時におけるがん誘発メカニズムに関する基礎的研究と食品成分による制御
Project/Area Number |
20500711
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
増田 修一 University of Shizuoka, 食品栄養科学部, 准教授 (40336657)
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Keywords | 糖尿病 / 発がん / アクリルアミド / CYP2E1 / 変異原物質 |
Research Abstract |
近年、糖尿病と日本人の死亡原因の第一位を占めるがんの間に相関があると考えられている。国立がんセンター研究所の津金昌-郎博士らは大規模な疫学的調査から、糖尿病患者は非糖尿病患者と比べて、がん発生率は高いことを報告している。しかし、糖尿病と発がんとの関係を明らかにした基礎研究は極めて少ない。本研究では、糖尿病状態において、変異・発がん物質であるアクリルアミド(AA)の遺伝毒性が変動するか否か明らかにするため、遺伝毒性試験を行った。 AA単独投与及び糖尿病状態において、DNA損傷性及び小核誘発能が誘導された。糖尿病状態における遺伝毒性の増強は、糖尿病状態での活性酸素の産生が亢進され、DNA切断が起こることが考えられた。さらに、糖尿病とAA投与の複合作用により、DNA損傷性及び小核誘発能が増強した。糖尿病状態において、AAの遺伝毒性が増強した要因としてCYP2E1の関与が考えられたことから、CYP2E1の発現及び活性を検定した。その結果、糖尿病状態においてCYP2E1 mRNA発現レベル及びCYP2E1活性の上昇を確認した。CYP2E1が誘導された要因として、糖尿病状態ではインスリンの分泌が低下し、それに伴い脂質代謝の過程で生成する1ケトン体の代謝をCYP2E1が担うため、生体防御のために上昇したことが考えられた。糖尿病状態における解毒酵素の活性低下作用を評価するため、GST活性及びGSH量を測定した。その結果、総GSH量が低下するにとを確認した。この低下は、生成した活性酸素の除去にGSHが大量に使用されたためと考えられた。さらに、糖尿病とAA投与の複合効果により、正常時に比較してGST活性が低下した。以上の実験結果から、糖尿病状態ではCYP2E1が活性化し、またAAの主要な解毒機構が減弱することから、生体内ではAAの遺伝毒性が増強し、発がんリスクが高まることが考えられた。
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Research Products
(10 results)