2010 Fiscal Year Annual Research Report
トランス脂肪酸が誘発する低アディポネクチン症の機構の解明
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20500719
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Research Institution | Seitoku University |
Principal Investigator |
加納 和孝 聖徳大学, 人間栄養学部, 教授 (70111507)
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Keywords | 脂肪酸 / アディポネクチン / 培養細胞 / PCR |
Research Abstract |
トランス脂肪酸は動脈硬化、虚血性心疾患などの原因になるとされ、欧米では行政による摂取低減の取り組みが始まっている。しかしながら、トランス脂肪酸がこれらの疾患を引き起こす機構については殆ど解析が行われていない。研究代表者は、これまでにエライジン酸、バクセン酸などのトランス脂肪酸はアポトーシスを誘導する濃度よりもかなり低い濃度で、アディポネクチン産生を低下させることを見いだした。さらに昨年度の生化学会で報告したように、TNF-αの遊離受容体様タンパク質であるエタナルセプトで処理するとアディポネクチン産生の低下を起こさないことから、TNF-αが関与していることも明らかにした。今年度は、このTNF-αを誘導している機構を解明しようとするものであった。本研究では、さらに実験を進めて、転写因子NF-kBの動きなどからTLR(トールライクリセプター)が関与しているのではないかとの仮説をたて、TLRの中和抗体を用いた実験を行った。実験の結果は、TLRをカバーしてしまうとエライジン酸によるTNF-αの合成の誘導は、予想した通り起こらなかった。さらにTLRの情報伝達系の下流にあるNF-kBの活性化が起こっているかどうかを確認するために、NF-kBの活性化を阻害するI-kBの分解の阻害剤を添加する実験を行った。その結果、TNF-αの産生にはNF-kBの活性化が必須であることが明らかとなった。いくつかの脂肪酸がTLRを介して情報伝達を行っていることが最近明らかになってきており、トランス脂肪酸であるエライジン酸もTLRを受容体として情報伝達を行っているものと考えられる。しかしながらエライジン酸のシス型であるオレイン酸では上記のような現象は起こらなかった。本研究で、エライジン酸によるアディポネクチン合成阻害には予想外のTLR受容体が関与していることを明らかにした。さらにエライジン酸の摂取により身体が炎症性反応を示し、健康への影響があることを証明した。
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Research Products
(1 results)