Research Abstract |
近年,種々のサプリメントを摂取するヒトが増えており,これまでより微量元素の過剰摂取が起こっている可能性がある。昨年度までの研究で,天然原料より作られたサプリメントには,高齢者に多い神経変性疾患との関連性が指摘されているアルミニウム(Al)およびマンガン(Mn)が多く含まれているものがあること,また,AlおよびMnのマウスへの長期間曝露が動物行動(回転カゴでの活動量)の低下を引き起こす可能性があることを示した。本年度の研究では,まず,サプリメントの摂取状況および意識調査を行い,サプリメント過剰摂取の可能性を調べた。その結果,18~20歳の男子では22.2%,女子では20.2%の人に摂取経験あり,摂取しているサプリメントの種類はビタミン類,プロテインが多かったのに対し,20歳以上では,女性で51.7%,男性で47.4%に摂取経験があった。また,現在摂取している人は,健康に気を使って食事をしている人が多く,63.0%が毎日飲用していた。サプリメントの種類としては,天然原料のものが多かった。以上の結果より,サプリメント摂取に伴う微量元素の過剰摂取の可能性が示唆された。次に,AlおよびMnの長期曝露がラットの記憶能力に及ぼす影響を調べるため,32週齢Wister系雄性ラットに,乳酸アルミニウムおよび塩化マンガン水溶液(それぞれAlおよびMnとして10,100,1000mg/L)を19ヶ月間飲料水として自由摂取させ,ステップ・スルー型受動的回避学習試験を行った。その結果,対照群に比べて,Al投与群では,記憶能の低下は認められなかったが,Mn投与群においては,用量依存的に記憶能の低下が認められた。
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