2008 Fiscal Year Annual Research Report
環境調和型反応を利用したマイクロスケール有機化学実験の開発
Project/Area Number |
20500787
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
井上 正之 Tokyo University of Science, 理学部・化学科, 准教授 (00453845)
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Keywords | ベンゼン / 臭素化 / 陽イオン界面活性剤 / アリルアルコール / 酸化 / 酸化マンガン(IV) / 陰イオン界面活性剤 |
Research Abstract |
1.ベンゼンの臭素化表記反応は高等学校化学における重要な反応の1つであるが,臭素単体の毒性や反応条件さらにはベンゼンに発ガン性,血液毒性があることなどから,従来は実験教材として扱われなかった。昨年度の検討で,触媒量の臭化ドデシルトリメチルアンモニウム(陽イオン界面活性剤)の存在下で,硫酸酸性水溶液中で臭素酸カリウムと臭化カリウムをモル比1:2で混合し,ベンゼンを加えて加熱すると,ブロモベンゼンが高収率で生成することが見出された。本法によれば,危険な臭素単体を用いることなくベンゼンの臭素化の実験を行うことができる。また触媒量の陽イオン界面活性剤を触媒に用いることで,水溶液中で重金属化合物を用いることを回避できるので,廃棄物による環境負荷を軽減することができる。 2.アルコールの酸化陰イオン界面活性剤の存在下で過マンガン酸カリウムと硫酸マンガン(II)との反応で生じた界面活性剤一体型活性酸化マンガン(IV)を酸化剤に用いると,ベンジルアルコールからベンズアルデヒドへの酸化が円滑に進行することが見出された。このとき酸化マンガン(IV)の表面に構築される疎水環境が十分でない場合には,ベンズアルデヒドから安息香酸への酸化が進行するという望ましくない反応が進行することが見出された。これによって,水溶液中で酸化マンガン(IV)によるアルコールの酸化の実験を手軽に行えるようになる。一方で,同じ条件下でシンナミルアルコールを酸化すると,中程度の収率しか達成されないことがわかった。
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