2010 Fiscal Year Annual Research Report
脳とこころの科学教育:創造的思考力を育む認知体験型学習ツールの開発研究
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20500800
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
池田 まさみ お茶の水女子大学, 人間発達教育研究センター, 特任准教授 (00334566)
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Keywords | 脳とこころ / 創造的思考力 / 科学教育 / 体験的理解と知識の融合 / 認知体験型学習 |
Research Abstract |
本研究の目的は、子どもの"科学的思考力の解発"と"創造的思考力の育成"に向けて、心理学で扱う認知的事象を科学教材に取り入れ、認知体験型学習ツールの開発を行うことであった。具体的には、思考パターンとして「クリティカルシンキング」を取り上げ、主に中学生を対象に授業実践と効果測定を行い、生徒の思考力育成に関する"脳とこころの科学教育"プログラムを現場に提案、活用することがねらいである。 最終年度は、本研究のなかで開発した中学生用クリティカルシンキング尺度を用いたパネル調査(2009年6月~2010年3月)から2波のデータを用いて、クリティカルシンキングと好奇心・情報活用の実践力、および、行動との関係について、それぞれ因果分析を行い、生徒がクリティカルシンキングを獲得するプロセスを検討した。 交差遅れ効果モデルを用いて構造方程式モデリングによる分析を行った結果、好奇心はクリティカルシンキングの全因子(探究心、客観的な判断、多様性の許容、証拠の重視)を高めること、また情報活用の実践力の各因子(収集力、判断力、表現力、処理力、創造力、発信・伝達力)もクリティカルシンキング全般に効果を持つことが示された。すなわち、クリティカルシンキングは好奇心の高さや情報活用の実践力が身につくことで伸びる可能性が示唆された。クリティカルシンキングと行動との関係については、探究心が行動全般を高める一方で、行動からクリティカルシンキングへ逆方向の因果関係も示された。円滑なコミュニケーション行動にはクリティカルシンキングに関わる多面的な能力の育成が必須であると同時に、その思考もまた具体的な行動や体験を通して育成・強化していくことが重要だと言える。今後さらに発達段階を踏まえて、学習動機などの観点も含めてその獲得プロセスを検討することで、子どもの科学的・創造的思考を育む効果的な教授法や学習ツールを提供できると考える。
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Research Products
(7 results)