2009 Fiscal Year Annual Research Report
遠隔高等教育・e-ラーニングに関する実効力のある質保証モデルの構築
Project/Area Number |
20500866
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
齊藤 貴浩 Osaka University, 大学教育実践センター, 准教授 (50302972)
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Keywords | 教育工学 / e-ラーニング / 遠隔教育 / 質保証 / 高等教育 / APQN / 評価基準 / 大学評価 |
Research Abstract |
本研究は、わが国の高等教育の実際の枠組みの中で,実効力のある最適な遠隔教育・e-ラーニングの質保証の枠組みを明らかにすることを目的として進めている。 今年度はまず、わが国の遠隔教育・e-ラーニングの質保証を取り巻く要因の調査・検討を行うため、前年度までの調査結果に基づき,遠隔教育,e-ラーニング,高等教育に関する内外の文献調査を継続して行うとともに,これらを取り巻く各種要因と教育提供者側の意識について,学会やシンポジウムの機会を利用した情報収集、並びに大学を対象とした訪問調査を行った。特に、遠隔教育,e-ラーニングによって教育を提供している教職員からは、本研究の最低限の質保証という観点からのアプローチに対して、強い否定的な意見が多く寄せられた。それは、現実に教育を提供し、常に質の向上を目指している立場からは、そのような質保証モデルにはインセンティブが働かないというものであり、「実効力のある」モデルを追求する本研究の考え方から、方針の転換を余儀なくされたと言える。 しかしながら、このことは最低限の質保証が全く意味がないとするものではない。単位や学位までを見越した認証評価等の外部質保証は、ディプロマ・ポリシーという形で政策的にも顕在化してきているところである。そこで、このような批判を発展的に捉え、最低限の質保証と、質的向上のための質保証を統合し、展開できるようなモデルを検討する方向へと研究をシフトさせている。これにより、当初計画を修正する必要は生じたものの、教育提供者の特徴による環境や考え方の差異などの構造的な特徴を見いだし、そのような特徴も含めてモデル化を行うという計画に沿ったものであるといえる。この二つの質保証モデルの統合の試みについては、その一部を国連大学のシンポジウムでの発表に活かしている。 さらに、これらの活動と並行し、欧米およびアジア太平洋地域の他国の質保証システムの情報収集を行った。現在、他国の研究者から調査研究結果に関する意見や批判を受けられるよう、準備を進めているところである。
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