2010 Fiscal Year Annual Research Report
遠隔高等教育・e-ラーニングに関する実効力のある質保証モデルの構築
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20500866
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Research Institution | National Institution for Academic Degrees and University Evaluation |
Principal Investigator |
齊藤 貴浩 大阪大学, 大学教育実践センター, 准教授 (50302972)
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Keywords | 教育工学 / e-ラーニング / 遠隔教育 / 質保証 / 高等教育 / APQN / 評価基準 / 大学評価 |
Research Abstract |
本研究は、わが国の高等教育の実際の枠組みの中で,実効力のある最適な遠隔教育・e-ラーニングの質保証の枠組みを明らかにすることを目的として実施された。 わが国の遠隔教育・e-ラーニングの質保証を取り巻く要因の調査・検討を行うため、引き続き遠隔教育,e-ラーニング,高等教育政策・施策に関する内外の文献調査を行った。また、本研究が質保証という新しい分野を対象としていることからも、特に教育提供者側の意識と政策担当者並びに質保証機関側の意識について,学会等の機会を利用して意見交換を行い、注目すべき事例に関して訪問調査を行った。 現在、政策的にも高等教育機関には「内部質保証体制の構築」が求められているが、質保証には3つの型がある。すなわち、(1)教育提供者が表明する質を確かに提供しているという意味での質保証、(2)正当な教育プログラムとして成り立つための最低限の基準を満たすという意味での質保証、(3)より質の高い教育の実現を目的とする質の向上のための取組、の3つである。本研究は、研究代表者が認証評価機関に所属していたことから(2)を志向して実効力のある質保証システムの構築を狙ったが、現場レベルではこ,れら3つの質保証が区分されることなく遂行されており、どちらかと言えば(2)の最低限の質保証は法的な最低基準のクリアという程度にしか捉えられておらず、残念ながら注意すらほとんど払われていないことが明らかとなった。 今後、(3)の質的向上を求める方向性からは、本研究で示したAPQNのモデルを(2)の最低基準として配慮しつつも、LMS等の遠隔高等教育で真っ先に取り入れられた新しいシステムを長所として捉え、教育の過程や効果が「見える」高等教育システムを構築していくことが質保証には必要となる。この流れは各種ポートフォリオの隆盛とも関連し、(3)の質的向上のための質保証を実現するために機能する。本研究で明らかにした3つの質保証の型と遠隔高等教育への適用について、大学等に広く提供していく予定である。
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