2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20500869
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
国分 充 Tokyo Gakugei University, 教育学部, 教授 (40205365)
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Keywords | スターリニズム / 心理学史 / 児童学 |
Research Abstract |
本研究は、ソビエトにおいてスターリンが権力を奪取していく1920年代中ごろから権力を確立する30年代後半までのソビエトにおける心理学に注目し、心理学界の動向を通史的に見ていく他、当時の心理学界を代表する人物の置かれた状況等を調べ、スターリニズムと心理学の関わりを明らかにすることを目的としている。本年度は、スターリン期に明らかな弾圧を受けた心理学の潮流である児童学に関して、1928年より発行された児童学専門誌“Πедология"に現れた記事の検索・整理を行い、何が問題とされ、どのような人物が主に係わっていたかを調べる作業を進めた。その結果、児童学は革命・内戦後の混乱した社会にあって子どもに関わる諸問題の解決を目指して、かなり広がりが見られた学的潮流であること、また、やはり禁じられた心理学派である精神分析のロシアにおける発展に係わった人々と児童学に係わった人々との間には少なからぬ重複がみられることが明らかになった。人物史としては、この時期に生き、当局による抑圧も経験することになるヴィゴツキー及びルリヤについて、その活動ぶりと学説の変遷を明らかにする作業を進めてた。本研究は、年度途中である10月に交付決定がなされたため、スケジュール調整がつかず調査のためにロシアへ赴くことは本年度はかなわなかった。かわりにカリフォルニア州立大学サンデェゴ校の心理学史家にして(ヴィゴツキーの高弟である)ルリヤの下で学んだマイケル・コールと研究討議を行うとともに、歴史的資料の提供を受けた。その分析を現在進めているところである。また、国内のソビエト心理学の第一人者である松野豊東北大学名誉教授から必要なレクチャを受けるとともに意見交換及び研究討議を行った。
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