2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20500869
|
Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
国分 充 Tokyo Gakugei University, 教育学部, 教授 (40205365)
|
Keywords | スターリニズム / 心理学史 / 児童学 |
Research Abstract |
スターリン期に抑圧された科学の代表である児童学について、エトキントなどの先行研究を調べるともに、1928年から1932年まで発刊された専門雑誌「ペドロギア」の記事を検索して、児童学が問題としたもの、児童学が置かれていた状況等について検討した。その結果明らかになったことには、以下のようなことがある。 (1)児童学者の少なからぬ者たちが、前時代においては精神分析の活動家であったこと。このことは、抑圧された科学の系譜を、人的繋がりをもって描きうることを示している。 (2)児童学に関わりをもっていた省庁には、教育人民委員部は当然として、そのほか、厚生人民委員部、交通人民委員部などもあったこと。 (3)ルリヤは1925年に精神分析の国際雑誌"Zeitschrift"のロシアの活動報告の中で、ソビエト・ロシアでは子どもに対する関心がきわめて高まっているとことを記しているが、そうした状況がこれらのことかもうかがわれた。 (4)こうした状況の中で、省庁をまたいだ児童学の連絡会議が存在したことが「ペドロギア」の記事検索から確認できた。また、このことは、エトキントが著したロシア精神分析運動史である「禁じられたエロス」の中でも述べられていることであった。 (5)そして、このように少なからぬ人民委員部が児童学とかかわっていたということは、児童学が政策科学的性格を強く持っており、政治権力にきわめて近い位置にあったことがうかがえた。また、そのことは、後の時代の弾圧とも関係してくるであろうことが予想された。
|