2008 Fiscal Year Annual Research Report
18世紀における流体力学の理論的発展に関する歴史的研究
Project/Area Number |
20500873
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
伊藤 和行 Kyoto University, 文学研究科, 教授 (60273421)
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Keywords | 力学史 / 流体力学 / オイラー / ヨハン・ベルヌーイ / ダニエル・ベルヌーイ |
Research Abstract |
平成20年度は,18世紀の流体力学の発展に関して,これまでの研究状況を確認し,ヨハン・ベルヌーイの『水力学』(1742)を中心に研究を進めた.その電子テキストを作成するとともに(ウェブ・ページにpdfファイルを公開中),とくに第一部における「ベルヌーイの定理」導出までの議論の進め方を検討した.息子のダニエルが「活力」(運動エネルギー)の保存を用いるという当時一般的な手法を用いていたのに対し,ヨハンは序論において,「活力」の概念を用いた間接的な方法によってではなく,力学の基本法則すなわち運動方程式から直接,流体の運動に関する理論を導くことを宣言している.そのために,まず彼は,ニュートンの『プリンキピア』に従って「加速力」や「起動力」といった基本概念を定義し,運動の基本方程式を提示する.その運動方程式は,距離と速度との一次の微分式という現在のものとは異なる形式のものだったが,それを質量で割った式に対して「パスカルの定理」を適用し積分を行なうことによって「ベルヌーイの定理」が導出されている.ヨハンは,運動方程式を定式化した最初の研究者の一人であるが,彼の式は我々が馴染みのものではなかったことに注意しなければならない.これまでの研究でも運動方程式は18世紀前半から中頃に定式化されたとされているが,この時代に運動方程式がいかなる形で定式化されていたか,ヨハンの式は一般的なものだったのかといった点に関して検討を進める必要がある. この研究の成果は,日本科学学会年会において「ヨハン・ベルヌーイ『水力学』における運動方程式」として発表し,また論文として公表する予定である.
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Research Products
(1 results)