2009 Fiscal Year Annual Research Report
18世紀における流体力学の理論的発展に関する歴史的研究
Project/Area Number |
20500873
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
伊藤 和行 Kyoto University, 文学研究科, 教授 (60273421)
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Keywords | 力学史 / 流体力学 / オーラー / ヨハン・ベルヌーイ / ダニエル・ベルヌーイ / 運動方程式 |
Research Abstract |
平成21年度は,昨年度に引き続き,ヨハン・ベルヌーイの流体力学の理論に関する研究をまとめるとともに,彼の息子ダニエル・ベルヌーイが『動水学』(Hydrodynamia, 1738)において展開している理論を,彼のアプローチとの比較検討を行なうことを通じて考察した. ダニエルは,『動水学』において「活力」(運動エネルギーに対応するものと考えられる)の保存法則を基本原理としていたが,その一方で圧力の問題を論じる際には運動方程式も用いていた.「活力」の保存法則と運動方程式という二つの力学の基本的アプローチがどのような関係にあるのかという点に関しては『動水学』では何も述べられていないことから,その問題に言及している二つの論文「力学の諸原理の検討と,力の合成と分解についての幾何学的証明」(1726)とある種の力学法則について」(1736)を検討した.前者においては,運動方程式が「ガリレイの原理」と呼ばれ,動力学の基本原理と見なされており,「活力」が力に比例することもこの原理から導かれていた.また後者においては,二つの「原理」は同一のものとされ,それらは「時間的力」と「空間的力」に対応するものとされている.これより,ダニエルがこれら二つの「原理」を統合的に論じようとしていたように思われるが,結論を導くにはさらに他の史料の検討を進める必要があると考えられる. 研究の過程で検討したダニエル・ベルヌーイの主要な論文についてはテキストを電子化し,ウェブページでpdfファイルとして公開する準備を行なっている.またこの研究の成果は,五月末に行なわれる日本科学史学会年会において「ダニエル・ベルヌーイにおける「力学の原理」」として発表し,論文にまとめる予定である.
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Research Products
(3 results)