2011 Fiscal Year Annual Research Report
18世紀における流体力学の理論的発展に関する歴史的研究
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20500873
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
伊藤 和行 京都大学, 文学研究科, 教授 (60273421)
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Keywords | 力学史 / 流体力学 / オイラー / クレーロー / ベルヌーイ / ガリレオ / 座標 / 運動方程式 |
Research Abstract |
平成23年度は,前年度の研究成果として,空間に固定された座標系概念のの成立に焦点を当て,「18世紀前半の力学における「座標」」として学会発表をするとともに,同名の論文にまとめた.また「活力」の保存則に関して,18世紀前半に活躍したベルヌーイとオイラーを中心に「レオンハルト・オイラーにおける「活力」概念」として学会発表した.また「活力」の保存法則に関して,その起源ともいえるガリレオの斜面上の下降運動の「原理」に関して,その理論的内容を再検討し,その成果を英語論文として公表した. 今年度の研究としては,第一に18世紀に前半を中心として「活力」の保存則の力学における位置づけと,その起源について検討した.オイラーが運動方程式を全力学の基盤として措定し「活力」の保存則をそれから導出する以前には,重力下の運動の考察では,ガリレオとホイヘンスの影響が強く見られる.とくにガリレオの力学の影響を「活力」の保存則と,加速運動の数学的理論化という二つの側面から検討した.この研究の成果を現在まとめているところであり,日本物理学会秋季大会において「18世紀前半の力学におけるガリレオ力学の影響」(仮題)として発表し,論文にまとめる予定である. 第二に,・18世紀後半の流体力学の理論的発展に関しては,1750年代以降のオイラーの研究と,1760年代以後のラグランジュの研究を比較検討し,その共通性(影響関係)と独自性の視点から考察を進めている.18世紀力学の終着点と言われるラグランジュの『解析力学』の歴史的記述に関しては,第一版(1788)と第二版(1811-5)においては改訂がなされており,その記述を比較検討することを始めている.流体力学に関する部分に関しては,両者のテキストを対照可能なフォーマットにして公開する準備を行なっている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は,昨年度に引き続き,最初の二年間における18世紀前半の流体力学理論に関する検討から二つの点で考察の視野を拡大し,研究を進めている.第一に18世紀前半から他の力学分野へ視野を広め,複数の領域において座標概念や「活力」保存則が共通の方法としてどのように用いられていたかを検討している.第二に,考察対象の期間を18世紀後半へと広げ,その研究を通じて前半から後半への理論的転換の考察を開始した.両者を通じて,流体力学の理論の歴史的発展の考察を中心に,古典力学における保存量と運動方程式という二つのアプローチの位置付けに関する考察をさらに進めている.
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Strategy for Future Research Activity |
18世紀前半に関しては,質点の他,流体や剛体,振動弦といった力学分野の研究において他分野の方法を流用することが特徴的なので,流体力学に限らず力学の諸分野全体を考察対象として検討を行なうことを継続する.一方後半に関しては,運動方程式および仮想変位の原理を基礎原理とし,流体の運動に特有な方法を見いだすことが主なる問題となっているので,流体力学に焦点をしぼって研究を進める.両者の研究を通じて,前半から後半力学にかけての理論的転換を明らかにすることを目指す.
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Research Products
(5 results)