2008 Fiscal Year Annual Research Report
量子力学形成期における解析力学の日本への移入に関する実証的研究
Project/Area Number |
20500876
|
Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
中根 美知代 Rikkyo University, 理学部, 准教授 (30212088)
|
Keywords | 東北帝国大学 / ゲッチンゲン大学 / ハミルトン・ヤコビ理論 / 前期量子論 / 石原純 / 天体力学 / 解析力学 |
Research Abstract |
教育課程の関係上、ゲッチンゲン大学で学んだ人々がハミルトン・ヤコビ理論に触れる機会があり、前期量子論の形成に本質的な役割を果たしていたので、この大学をモデルにした東北帝国大学を調査した。東北帝大理科大学は1911年に設置されたが、学部制に改組された1919年に大幅な教育改革がなされていた。改組以前には、物理学科で力学が教えられていたが、使われていた教科書を見る限り、内容はニュートン力学であった。天体力学は数学科に設置されていたが、実際に講義がなされていたかは明らかではない。改組後は、数学科と物理学科が一体化し、数学解析専攻・幾何学専攻・数論および代数学専攻・数理物理学専攻・理論物理学専攻・実験物理学専攻といったコースが設置された。この枠組み中に、ハミルトン・ヤコビ理論が入り込む余地があったことが推定され、理論物理の教授石原純も、これを教える素養は持ち合わせていた。 この時点での前期量子論を研究する際、ハミルトン・ヤコビ理論の道具立ては、もちろん必要である。しかし、1918年の石原の報告から読み取る限り、正準変換の理論を伴わないもので十分であるので、当時天体力学の分野では日本でも教えられていたと察せられるハミルトン・ヤコビ理論よりも水準の低いもの、従来の力学に少し手を加えた講義で対応できたと判断される。 なお、重光蔟『解析力学』(1913)のように、書名は解析力学であっても、内容はニュートン力学という教科書を実際に見た。現在の教科書から想像することと、当時の内容が大幅に違うことに注意を払う必要性を改めて認識した。
|
Research Products
(1 results)