2010 Fiscal Year Annual Research Report
量子力学形成期における解析力学の日本への移入に関する実証的研究
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20500876
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
中根 美知代 立教大学, 理学部, 特任准教授 (30212088)
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Keywords | 分光学 / ハミルトン・ヤコビ理論 / 天体力学 / Sommerfeld / 作用-角変数 / 量子論 / Schwarzschild / Charlier |
Research Abstract |
昨年の結果を受け、天体力学とは独立した物理学の分野にも関心を広げた上で、日本でのハミルトン・ヤコビ理論の受容過程を考察した。その結果、この理論を普及することの重要性を1926年頃にいち早く唱えたのは、分光学の研究者たちであることがわかった。物理学への浸透を考える上では、天体力学よりも、彼らの反応のほうが重要である。ドイツでは、1919年に出版されたSommerfeldの『原子構造とスペクトル線』を拡張していくなかで、量子論が徐々に取り入られていった。したがって、量子力学誕生以前から研究活動を進めていた日本の物理学者のなかで、古典的な物理学の研究を引き継ぐ形で量子論を受け入れていたのが分光学の研究者たちであったのは自然なことである。しかし、これまでの歴史研究は、量子力学誕生期に教育を受けた新しい世代に関心が集中しがちで、このことは見落とされていた。日本での分光学研究の伝統の上にたって、量子論の受容・発展がなされたことを論じる必要性が明らかになった。 日本での状況のより的確な分析のためには、ヨーロッパでの量子論とハミルトン・ヤコビ理論との関係について、さらに深い考察が必要である。分光学とハミルトン・ヤコビ理論を結ぶのは、Schwarzschildらによるシュタルク効果の説明であるが、ここでは天体力学での作用一角変数が使われていた。天体力学・分光学・量子論を結ぶこの概念の形成過程が重要であると判断し、1907年にCharlierの天体力学の教科書において、その原形が導かれ、Schwarzschildが量子論に取り込み、そこでの考察から新しい数学的性質が発見される過程を具体的に示した。
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Research Products
(3 results)