2011 Fiscal Year Annual Research Report
量子力学形成期における解析力学の日本への移入に関する実証的研究
Project/Area Number |
20500876
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
中根 美知代 立教大学, 理学部, 特任准教授 (30212088)
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Keywords | 天体力学 / 作用・角変数 / シュタルク効果 / 杉浦義勝 / Max Born / 正準変換 / ハミルトン光学 |
Research Abstract |
ハミルトン・ヤコビ理論の日本への移入には、分光学の研究者が積極的な役割を果たしていた。この理論と分光学の関係を量子論の文脈の捉えるとき、ふたつの論点があった。一つはシュタルク効果の説明のために、この理論の一部である作用・角変数が効果的に使われたこと、もう一つは、ハミルトンによる光学の理論が見直され、波動力学の形成と結びついていることである。この二つを指摘したうえで、それぞれの発展過程を検討し、さらに日本へ移入される過程を分析した。前者については、作用・角変数という概念が、天体力学で形成され、シュタルク効果の説明に持ち込まれる過程を明らかにした。作用・角変数を伴うハミルトン・ヤコビ理論は、Max Bornの著書『原子力学の諸問題』(1926年)で取り上げられている。これは、湯川秀樹・朝永振一郎らに影響を与えた著作である。この変数を伴うハミルトン・ヤコビ理論は、このような形で、1926-27年には日本へ移入されたと考えられる。 Hamiltonの光学研究の見直しは、20世紀初頭F.Klein以来行われていたが、波動力学の形成と結びつけたのは、1924年に提出されたde Broglieの学位論文においてである。引き続くSchrodingerの業績と合わせた形での波動力学の考え方は、発表後、ほどなく日本に伝えられた。ただし、光学に関するハミルトン・ヤコビ理論と彼らの仕事の関連は、1928年2月、杉浦義勝による集中講義『新量子力学と其の応用』において指摘された。杉浦は1924年秋より3年半ヨーロッパに留学し、パリ・コペンハーゲンを経て、1927年にゲッチンゲンへ行き、Bornの光学の講義を聴いていた。1936・1940年に公刊された杉浦の『光学1・II』をもって、量子論的解釈を伴うハミルトン光学が、日本に定着したといえよう。
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Research Products
(3 results)