2008 Fiscal Year Annual Research Report
縄文時代における生業・交易圏の復元研究-動物遺存体の産地同定を中心として-
Project/Area Number |
20509010
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Research Category |
Grant-in-Aid for Special Purposes
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Research Institution | Research Institute for Humanity and Nature |
Principal Investigator |
石丸 恵利子 Research Institute for Humanity and Nature, 研究部, プロジェクト研究員 (50510286)
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Keywords | 考古学 / 動物遺存体 / 安定同位体 / 産地同定 / 交流 / 流通 / 文化財科学 / 食文化 |
Research Abstract |
出土動物遺存体および骨角器の出土基礎データ収集を目的として、公開されている貝塚データベースで得られない2000年以降の遺跡報告書を調査し、縄文時代以外の時代も含めて約50遺跡分を基礎データとして収集した。解体痕・打割痕などの観察は、山陰と九州の遺跡において実施した。また、魚類の体長復元のための資料実見および計測は、縄文時代以外の時代を含めた11遺跡で実施した。 狩猟採集域復元のためのイノシシとニホンジカの歯のエナメル質および植物のストロンチウム(Sr)同位体分析は、吉胡貝塚(愛知県)と南方遺跡(岡山県)、帝釈峡遺跡群(広島県)内の複数遺跡の出土資料(イノシシとニホンジカの歯、淡水貝類)および遺跡周辺の現生植物で実施した(約100点)。その結果、遺跡周辺の地質的特徴を理解したうえで植物サンプルを採取し、それらとイノシシ・ニホンジカや貝類の分析値とを比較することで、狩猟採集域復元が可能だと考えられる。また、時代(縄文と弥生)によって活動域が異なる可能性(=主たる生業活動の差異)も示唆された。その成果は、学会や研究会で発表し(日本文化財科学会、動物考古学研究集会、近江貝塚研究会)、多くの反響を得た。ただし、貝類については事前に貝殻の元素濃度測定がでず、処理する貝殻の必要量を正確に把握できなかった。そのため、抽出した鉛とネオジウム(Nd)の元素濃度が低く、十分な測定値が得られなかった。しかし、Nd同位体比は沿岸域では差(地質の差)を示すと考えられるため、今後抽出方法を改良することで貝類についても産地(海域)が特定できる可能性がある。 以上のように、日本の出土資料において初めての試みである動物遺存体のSrやNdなどの安定同位体分析が、縄文時代の狩猟採集域の復元に有効な分析方法のひとつであることが確認できたことは、交流・流通研究における新しい分析視角として大きな成果だといえる。
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Remarks |
基盤C
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