2010 Fiscal Year Annual Research Report
縄文時代における生業・交易圏の復元研究-動物遺存体の産地同定を中心として-
Project/Area Number |
20509010
|
Research Institution | Research Institute for Humanity and Nature |
Principal Investigator |
石丸 恵利子 総合地球環境学研究所, 研究部, プロジェクト研究員 (50510286)
|
Keywords | 考古学 / 動物遺存体 / 安定同位体 / 産地推定 / 交流 / 流通 / 文化財科学 / 食文化 |
Research Abstract |
最終年度である本年は、これまでに収集した北海道から沖縄までの魚類および哺乳類資料の同位体分析を進めた。その結果、魚類の炭素・窒素同位体分析では、北海道・東北地方、関東地方で遺跡ごとの比較データを示すことができた。たとえば、関東地方の遺跡で近隣に位置するが丘陵面が異なる立地の遺跡では、同魚種の同位体比に差が認められることから、漁撈域が異なっていた可能性が示唆された。魚類については、北海道から沖縄までのほぼ全国の主要な遺跡の資料を収集し多くの分析値を得ることができたといえる。また、イノシシ・ニホンジカにおいても同位体比の地域差があることを確認することができた。主要な食料資源であった哺乳類の同位体比に差があることは、人の食生態を考えるうえでも貴重なデータが得られたと考えられる。Sr同位体分析においても、九州(熊本・佐賀)および関東地方(千葉・東京)で、地域内での同位体比の相違を確認することができ、これらの結果から比較的近郊で狩猟活動が行われた可能性が指摘できた。これまでに分析を行った中国地方、東海地方に加えて、4地域での検討を行うことができた。以上の成果は、海外(ICAZ:International Council for Archaeozoology)や国内の複数の学会やシンポジウムで発表し、一部論文として公表した。また、期間中に収集した全国の遺跡出土動物遺存体データによる動物資源利用の多様性や地域差などを検討し、図書(共同執筆)としても成果を発信した。ただし、貝類については、貝殻の続成作用の有無を検討する基礎実験(Sr同位体分析、元素濃度分析)の結果から、さらに新たな分析視点を加えることによってその精度が高められることが判明したため、今後の新しい研究として発展させていくことで、貝類の産地同定方法が確立できると期待される。
|