2010 Fiscal Year Annual Research Report
鍾乳石の茶色い縞々に着目した古気候変動復元の技術構築に関する基礎的研究
Project/Area Number |
20510009
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大沢 信二 京都大学, 理学研究科, 教授 (30243009)
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Keywords | 鍾乳石 / 縞模様 / 洞内河川 / 懸濁物 / 水没 / 洪水 / 成長 / 過飽和度 |
Research Abstract |
昨年度までの研究で得られた「鍾乳石の茶色と白の縞模様は,鍾乳石本体を構成する方解石の成長の季節変化に対して,その成長が遅くなる夏場に洞内河川から茶色物質が付加されることで与えられる」という縞々の形成過程に関する新たなモデルの検証のために,成長中の鍾乳石表面のその場色彩測定,洞内河川水の懸濁物量(濃度)の計測,自記水位計による洞内河川の連続水位測定と比較検討のための自記雨量計による降水量観測を行った.その結果,鍾乳石の水没とともに鍾乳石表面の色が茶色になり,水没解消後に次第に白く戻って行く様子が観察された.さらに,日降水量100mm程度以上になるとき,鍾乳石が洞内河川に水没すること,そのような洪水時には河川懸濁物量は平水時の10倍以上に達することが判った.この結果は,鍾乳石の茶色縞は,洞内河川への鍾乳石の水没の記録であり,特に濃い茶色スジは洪水に対応している可能性を強く示すものである 一方,初年度より継続して行っている滴下水を用いた間接的な鍾乳石の成長率(単位時間当たりの析出量)の観測から次のような新たな認識を得た.石筍の成長率は,夏場に遅く,冬場に速いという大方が予想する季節変動を示したが,冬場の1月頃に一時的に成長が少しだけ遅くなるのが見られた.それは,その頃滴下水の水量が非常に少なくなるためであり,基本的に石筍の成長率に現れる変動は滴下水の炭酸カルシウムに対する過飽和度の季節変化によって生み出されることが判らた.そして,当初の我々も含め多くの人々が信じていたような「鍾乳石は洞外大気による洞内空気のベンチレーションが激しい低pCO_2時によく成長し,高pCO_2時には成長が鈍る」という関係は認められなかった
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